問題は「ZOZOTOWN」を経由してネット購入できてしまうことだ。つまり、「店頭で現物を見て質感等を確認するだけして、購入は安価なネットで」という行動が簡単にできてしまう。これは「ショールーミング」と呼ばれる行動で、家電量販業界を中心に海外でも国内でも問題視されてきたものだ。
「WEAR」にいちはやく賛同したのは、パルコだ。一方で対抗手段としてルミネでは施設内の写真撮影を禁止にすることで、バーコード読み取りをさせないという考えを打ち出している。中にはバーコード自体の撮影をしづらくする方法などを考えている小売りもあるようだ。
売上がネットに流れてしまえば、リアル店舗を維持しきれなくなりかねない。死活問題として戦う姿勢を見せる企業も、逆に時代の流れにいち早く乗ろうという企業もあるようだが、実際にはどちらの姿勢をとるべきなのだろうか。
●家電量販各社は対応に差
ショールーミングは家電量販店で特に問題視されてきた。家電は似たような製品の性能比較をしたい、クチコミを確認してから買いたいというようなニーズが多く、比較的ネット知識のあるユーザーも多かったため、早くから価格比較サイト「カカクコム」などで値段を確認してより安価なところで購入する、というようなことがよく行われてきたからだ。
これに価格で真っ向対抗しようという方向へ打って出ているのが、ヤマダ電機だ。仕入れコストや店舗コストを徹底して抑えて、Amazonにも対抗できる価格を提示するという方向で戦うのだという。
一方でネットを柔軟に取り入れたのが、ヨドバシカメラだ。店頭でスキャン用のバーコードをわざわざ展示し、自社通販サイトや他社サイトへの誘導を行っている。ショールーム化されてしまうリスクはある程度背負いつつ、そうした比較行動をとる利用者に自社通販サイトの特徴を解説するなどして接客機会を増やしているという。
どちらの対応が正解だということは現段階ではできないが、少なくともショールーミングはすでに食い止められる現象ではない。あちらの店舗ではできることがこちらではできない、ということが単純にマイナスと受け止められる可能性もあるだろう。しかし何の方策もなく、ただショールーミングというトレンドに流されるだけでよいわけもない。
●価格ではなくサービスで勝負
単純な価格勝負は、ヤマダ電機なら規模的にもある程度できるのかもしれない。しかし衣料品業界等でそれができるかというと、なかなか難しそうだ。店舗維持コストがない分、どうしてもネットショップのほうが安価にしやすい。
だとすれば、戦えるのはサービス面だろう。十分な商品知識のある店員が目の前で即座に質問に答えてくれる、ユーザー側が求める以上の提案をしてくれる、という基本的なことを強化していくのは重要だ。すでにネット店舗ではチャットでのリアルタイム対応や、他のユーザーの購買行動を分析して「この商品を買った人は一緒にこれも買っています」と提案するようなサービスも行われているが、それを越えることがリアル店舗でならばできる。
例えば衣類ならば、単純なアイテム同士のコーディネート提案ではなく、本人の体型や髪型、髪色に合っているものを紹介できるかもしれない。購入時に身につけていたアイテムとの組み合わせ提案や、着回しアドバイスでもよい。夫婦で買い物に来たならば夫婦単位で、親子でならば親子でのコーディネートもおもしろい。
家電ならば大型製品の設置サービスや梱包材の引き取り、旧製品の引き上げや下取りも魅力的だ。さらに故障時の対応などもよければ、対面で購入することを選ぶ人が増えるかもしれない。
●店に行く意味をつくり出す
図式としては、大型量販店 vs.小規模店舗の時と同じだ。価格や品揃えでの真っ向勝負が難しい中、生き残った店にはサービス面で特色を持ったところが多い。いわゆる「街の電気屋さん」は電球交換からリフォームのアドバイスまで手がけて家に入り込み、がっちりと客をつかむことで生き残っていたりする。また、メーカーによっては大型量販店やネット店舗で扱わない特殊な商品を卸しているというケースもあるようだ。
店に行く意味が大事なのだ。店で買ってもネットで買っても同じなのでは、価格勝負になってしまう。自社のネット通販に自信があるのならば、いっそ店舗をショールームとして割り切り、素晴らしいショールームにするという考え方をしてもよいだろう。
戦いを避けることはできない今、どう対抗すべきなのか。今回の「WEAR」で衣料品業界は揺れているようだが、一足先にその衝撃を体験している海外の事例や家電業界などの対応を参考に、うまく立ち回る必要がありそうだ。
(文=エースラッシュ)