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オトコたちのウットリワールド”をぶった斬り!「男性誌」のあぜ道 第12回

なぜかニットの可能性追求する男性誌『Safari』に感じる、“イラッ”の正体とは?

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Safari 12月号』(日之出出版 HPより)
 ご機嫌うるわしゅう。漆原直行です。ニットなんて、1枚も持ってません。

 男性誌は種々雑多に刊行されているワケですが、これまで本連載で取り上げてきたものを振り返ってみますと、『LEON』(主婦と生活社)と『GOETHE』(幻冬舎)の登場頻度がとても高いのですね。まあ、この2誌は良くも悪くもキャラが濃く、オリジナリティ(イロモノ感!?)も際立っておりまして、勢い登場回数も多くなってしまうのも、やむを得ないところがあります。

 そんなこんなで、もはや「月刊LEON/GOETHE批評」といった趣を醸しつつある本連載ではございますが、決して“ちょい不良オヤジ”や“24時間仕事バカ”に日和っているワケではなく、その他の男性誌にもちゃんと目を光らせております。で、今回取り上げるのはこちらの特集。

『Safari』(日之出出版/12月号)
海でも、街でも、部屋の中でも使いこなせば
ニットは毎日を冒険(ワクワク)に変える!

 時節柄、ニット絡みの企画が数多く見られた12月号の男性誌界隈。そのなかでも、この特集はなぜかジワジワと心に迫ってきたのです。というか、『Safari』という媒体は読むたびにジワジワ来るんですよね。日本人の遺伝子に刷り込まれているといっても過言ではない、捨てようとしても捨てられない白人コンプレックスが、3日前に沸かした風呂水の底に溜まったオリのように、そこに存在しているから。一瞥した程度では見えないけど、目を凝らすと確かに何かが沈殿している……そんな薄ら寒さでしょうか。

 『Safari』の特徴は、アメリカ西海岸的トレンド、アメリカンセレブ的マインドに帰依した大人カジュアルへの著しい傾倒といえます。端的には、出てくるモデルが全員白人であり、撮影ロケーションなどの背景も徹底的にアメリカ風なのです。毎号のように、パパラッチが撮影したような、ハリウッド俳優やセレブリティのカジュアルファッション姿を掲載し、微に入り細を穿つ解説を加えてくれます。

 ページを繰るたび、なるほど確かにカッコいい。ほどよく知的で落ち着いた大人のためのカジュアルを、非常に魅力的なかたちで提案してくれるのです。しかし一方で、絶対に見逃してはならないのが、ハリウッドセレブが着ているからカッコよく見える、という事実でしょう。というか、彼らは何を着ても似合うし、着こなしてしまうのですよ。それこそ彼らなら、ヨレヨレのランニングシャツにグレーのタテ縞が入ったボロボロのトランクス姿でも、女性を骨抜きにしてしまうでしょう。

 そもそもファッション誌は、ある種のファンタジーを読者に提供している側面もあるので、前述したような指摘は無粋でしかありません。が、理想と現実を一度意識してしまうと、ページをめくるたびにどこか白けるような感覚を覚えてしまうのは、私の性根がねじ曲がっているせいなのでしょうか。“ただしイケメンに限る。それも白人に限る”と念押しされているような、居心地の悪さを感じずにはいられません。

●西海岸セレブ万歳なニットファッションの提案にムズムズ

 では、そんな背景を踏まえつつ、この特集の冒頭を飾る導入文をチェックしてみましょう。

「たかがニットで、毎日がワクワクするなんて まあ大袈裟な! な~んて感じた人も いることだろう。でも、はたしてそうだろうか? 今までもちゃんと着こなしてきたというのなら、それらのニットを思い出してみてほしい。もしかして、それはスウェット代わりに使う テロッとした薄ニットパーカーだったりしない!?」

「いい大人にとって、ニットの可能性というのは 決してこれだけではない。もっと奥が深い。たとえば、気持ちよく晴れわたった週末、愛しの彼女(パートナー)と海沿いのドライブに出かける」

「優しそうで、育ちもよさそうな大人に見せるなら やはりニットの出番」

「いつものレザー姿とは、ちょっと 雰囲気が違うアナタの姿に、助手席の 彼女も思わずワクワクするのでは!?」

これでもかなり端折っているのですが、そういう意図で編まれた特集のようです。まあ、なんとなく雰囲気は理解できたような気もしますが、タイトルで謳っている「冒険」感があまり伝わってきません。だいたい、冒険を「ワクワク」と読ませる(ルビを振る)センスに共感できるかどうかが、まず最初の踏み絵なのかもしれません。

 ルビといえば、彼女に「パートナー」とルビを振っているあたりにも、ちょっとムズムズくるのです。何より、ページによってそのルビがあったりなかったりするのがどうも気になります。そういう細かいところに目が向いてしまったのは「今日はなにをしようかと話しながら、挽きたてのコーヒーにケトルの湯を注ぐ。そして、次のバカンスはどこへ行こうかなんて話を2人でしてみたり」なんて一節に無性にイラッときてしまったせいかもしれません。もっとも、鍋で沸かした湯でインスタントコーヒーをいれ、一人さみしく『Safari』を熟読していたのがいけないのでしょう。

 とまあ、なんだかんだと揚げ足を取ってしまいましたが、紹介されているニットアイテムは、どれもこれも素敵です。ニットダッフルなんて、私も欲しくなってしまいました。あと必要なのは、同アイテムを紹介しているページのグラビア(犬の散歩シーン)にあるように、高そうな犬と、スレンダー美人の彼女(パートナー)でしょうか。さらに付け加えるなら、適度に鍛えられた長身細身の体躯と、彫りが深くて無精ヒゲがたまらなくセクシーに見えるバタ臭顔もおのれにほしいところです。

 溜息しか出ないので、とりあえず牛丼でも食います。 
(文=漆原直行)

【プロフィール】
漆原直行(うるしばら・なおゆき)
1972年、東京都生まれ。編集者、記者、ビジネス書ウォッチャー。大学在学中からライター業を始め、トレンド誌や若手サラリーマン向け週刊誌などで取材・執筆活動を展開。これまでにビジネス誌やIT 誌、サッカー誌の編集部、ウェブ制作会社などを渡り歩きながら、さまざまな媒体の企画・編集・取材・執筆に携わる。ビジネスからサブカルまで“幅だけは広い”関心領域を武器に、現在はフリーランスの立場で雑誌やウェブ媒体の制作に従事。著書に『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』『ネットじゃできない情報収集術』などがある。