ビジネスに関わっている人なら常識として知っていることですが、基本的に全てのビジネスはモノや情報、能力を「持っている人」から「持っていない人」に提供することに対価が発生します。
自動車会社から車を買うのもそうですし、好きなミュージシャンのコンサートに行くのもそう。つまり、自分にはできないことを誰かにお願いすることでビジネスは生まれます。
だとしたら、ビジネスパーソンとしてもっとも必要なのは、自分自身が「持っている人」になるためのスキルなのかもしれません。
企業再生コンサルタント、斎藤広達さんの著書『ビジネスプロフェッショナルの教科書』(日経BP社/刊)は、そのスキルの鍛え方を教えてくれる一冊です。
今回はその中から、物事を論理的に考え、新しい視点やアイデアを得るために有効な「ロジカル思考」の鍛え方を紹介します。
■ロジカル思考の基本
ロジカル思考というと難しいイメージがありますが、そんなことはありません。
「私はアイドルの○○ちゃんが好きだ、だからみんなも好きなはずだ」という、ちょっと破綻したように見えるこんな意見も、個人的な嗜好と一般的な傾向がロジカルに結びついているとも言えます。そういう意味では、私たちは誰に習わずともロジカルに物事を考える能力があるのです。
■論理的意見を作るための「PAC思考」とは
ただ、もちろんこれはビジネスの場で通用するロジカル思考ではありません。
引き続き「私はアイドルの○○ちゃんが好きだ、だからみんなも好きなはずだ」という意見を例にあげますが、これをロジカルな意見として成立させるなら、「PAC思考」が必要になります。
「PAC思考」とは
・P…Premise(前提・事実)
・A…Assumption(仮定条件)
・C…Conclusion(結論)
のこと。
これをあてはめると「私はアイドルの○○ちゃんが好き」が「P(前提)」で、「みんなも○○ちゃんが好きなはずだ」が「C(結論)」となります。
ただ、まだこの意見には「A(仮定条件)」がなく、ここを埋めることがロジカルな意見を作るポイント。
つまり「“私”の嗜好が世間一般の傾向と合致すること」が説明できれば、「私はアイドルの○○ちゃんが好きだ、だからみんなも好きなはずだ」はロジカルな意見として成り立つわけです。
このように、身の周りの様々なことを「PAC」で考える癖をつけると、ロジカル思考のトレーニングになるはず。本書にはさらに「PAC思考」の応用についても詳しく解説されています。
物事を論理的に捉えることは自分の意見に説得力を持たせることになりますし、詭弁に騙されないためにも有効です。そして何より、世の中のあらゆる事象からビジネスの可能性を見出す眼を持つために、ロジカル思考は不可欠なものです。