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吉田潮「だからテレビはやめられない」(1月20日)

医龍、S…医療&警察モノだらけの今クール連ドラ、4分類で“新鮮味のなさ”を分析

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『医龍4』公式サイト(「フジテレビ HP」より)
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。

 医療モノと警察モノ。1月スタートの今クールの連続テレビドラマは、テーマが異様に似通っている。新しいテーマへの挑戦はせず、「このへんなら年寄りも観るでしょ」的な、やっつけ感も漂う。もちろん、各局が差別化を図ろうとしていろいろな味付けを加えているし、その努力には涙ぐましいものがある。でも、大まかに分けると次のタイプ。

(1)人並み外れた技能を持った医者なり警察官なりが登場
(2)(1)の人物はたいてい暑苦しい理想主義者、もしくは偏屈な厄介者
(3)「絵空事」のような、新しい部署が結成される
(4)必ず関係者(登場人物)が都合よく事件や事故に巻き込まれる

 どこにでもいる、淡々としたごく普通の人物ではドラマにならないし、テレビ的に脚色しやすい新部署のほうがつくりやすいのは確かだ。ただ、やたらに冗長な手術シーンは辟易するし、医学用語を連発して図解を入れなければいけないような病気解説って、誰が観たいと思うのか。役者の力量を発揮するというよりは、いかにドラスティックな治療方法であるかを誇示したい制作側のアピールにすぎない。

 そういえば、知人の医者が言っていた。「ドラマは好きだけど医療モノはムカつくから絶対に観ない」と。雪の中、屋上で上半身裸になって術前イメトレしちゃう医者に、本業の人たちは呆れるほかないのだろう。いや、私だって呆れるわ。極寒の中、乳首ピンコ勃ちでそんなイメトレしている時間があったら、手術に備えて早く風呂入って寝ろ、と思う。体調管理をちゃんとしろ、と思う。あ、『医龍4』(フジテレビ系)の坂口憲二のことね。

 鋭い観察眼と見立てで患者を救ったり、事件を解決していく、というのも、いかにもドラマらしい。傾向としては、こうした特殊な才能を持った若輩者が徐々に力量を発揮。社会常識や協調性はなくても才能ひとつで渡り歩くという夢物語だ。あ、『戦力外捜査官』(日本テレビ系)の武井咲とか『Dr.DMAT』(TBS系)の大倉忠義のことね。

 そして、緊急事案対応取調班だの特殊急襲捜査班だの、実在するんだかしないんだがよくわからない新部署。泣き落としで容疑者をゲロさせたり、現実離れも甚だしいドンパチバンバン銃撃戦を繰り広げたり。あ、『緊急取調室』(テレビ朝日系)の天海祐希とか『S -最後の警官-』(TBS系)の綾野剛のことね。

●既視感が拭えず、差別化できていない今クールの連ドラ

 いずれもまだ初回しか観ていないけれど、たぶん(1)~(4)の分類にほぼ当てはまる。たぶんNHKの大河ドラマ『軍師官兵衛』もこの手で、大枠は超えていない。戦略の目利きができる若造が大活躍ってトーンだし。大河もますますいよいよ薄っぺらい感じになったな。

 パターン化できる=既視感が拭えない、差別化できていない、驚きも新鮮味もない、ということだ。テーマや描き方が陳腐でも、そこに人間の真理の深淵をのぞかせるような物語があれば、視聴者の心に響くし、脳裡に焼き付けられるのだけれど。現状としては、かなり厳しいだろうな。「また同じようなことをやりおって」と言われるだけだ。

 とりあえず冷静に分類してみると、つまらないドラマばっかりに思えてきた。損である。こうなったら、細部に宿る小ネタや脇役の妙を探すしかない。まずは煮ても焼いても食えない『戦力外捜査官』で、脇役を演じる関根勤の暴走に期待しよう。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。