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吉田潮「だからテレビはやめられない」(1月27日)

テレ東、秀逸な手法光る深夜番組~素人と「ひとんち」を使い倒す面白さ?

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『家、ついて行ってイイですか?』公式サイト(「テレビ東京HP」より)
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。

「やっぱり素人は予測不能で面白いなぁ」と思わせるのが上手なテレビ東京。最近、気に入っている番組が『家、ついて行ってイイですか?』(毎週月曜夜11時58分放送)である。深夜、終電を逃したとおぼしき一般人をつかまえて、家までのタクシー代を出す代わりに家に上がらせてもらう、という番組だ。渋谷、新橋、新宿などのターミナル駅で終電が終わった頃合いに、最小限のスタッフを配置。テレビ東京は「お金かけず、スタッフを酷使し、一般人を利用する」のがとてもうまい。

 この企画に乗っかってくれる一般人が、これまたフレンドリーで協力的。もちろんそういう人物を選んでいるのだろうけれど、わりとプライベートな話を惜しげもなく差し出してくれる。その人となりを短いインタビューでまとめる手腕も秀逸だなと思うが、なによりも無防備で一切構えていない、ガチな「ひとんち」を覗き見できるのが面白い。

 たいてい撮影が入るとなると、普段通りではない状態になるのだが、深夜の突撃ロケであり、家族は寝静まっていたりもする。部屋も尋常じゃなく散らかっていたりもする。食べかけ飲みさしの食器がそのまんまだったり。そこに図々しいスタッフが入り込んで、部屋の様子や家族構成、本人の生い立ちやら経緯を映し出す。生々しく嘘偽りのないつくりだ。

 夢破れて家庭をもち、お父さんになっちゃったサラリーマン、ダンナがノリでスタッフを連れてきちゃって、深夜の突然の訪問にもかかわらず文句ひとついわない、できた嫁、散らかりっぱなしの家で訥々と自分の人生を語るお父さん、家に微妙な格言を貼りまくっているMISIA好きのサラリーマン……。取材をOKする人はみないい人であり、観ている側にもそれが伝わってくる。空港で外国人をとっつかまえて密着取材を依頼する『Youは何しに日本へ?』(毎週月曜夜6時30分放送)といい、テレ東はこの独自の手口「歌舞伎町的キャッチ法」で大成功しているのだ。

●的を射る素人のコメント

 さらに、このVTRを受けるのが、おぎやはぎの矢作兼とビビる大木。スタジオではなく、これまた一般人のお宅(街でスカウトするらしい)に図々しく上がり込んで、そのお宅で収録する。もちろん、その家の家主も一緒にコメンテーターとして登場。ひとんちに上がり込んで、ひとんちを観る。スタッフはさぞや大変だとは思うが、絵ヅラが新鮮だ。狭い居間でコタツに入りながら、VTRを眺めてあれやこれやとコメントする。家主(たいていがおばあちゃん)の素直な一般人コメントも実は的を射ているし、それをすくい取る矢作&ビビるも手慣れたものである。

 先日の放映分では新企画にも挑戦。漫画家の蛭子能収に終電後、新宿から三鷹まで歩かせて、「始発まで待って電車で帰る」のと「歩いて帰る」のどっちが早いかを実験させる企画だった。そもそもやる気のない蛭子さん。弱音吐く蛭子さん。通りかかった深夜のラーメン屋で、大勢で盛り上がってる雰囲気が大嫌いな蛭子さん。デニーズに立ち寄り、パスタを食べてなんとか時間を稼ごうとする蛭子さん。不憫で気の毒だけど、笑ってしまった。

 一般人(蛭子さん含む)とそのお宅を、ここまでうまく使い倒すのは、驕りのない(お金もない)東京ローカル局であるテレ東ならでは。この番組も人気が出れば、ゴールデンタイムへと進出するのかもしれない。できれば深夜にひっそりやっていてほしいんだけどな。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。