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知ってるようで知らない……薬局の歩き方・クスリの選び方 第21回

インフル&花粉対策…空間除菌商品は効果なし?誇大広告横行、人体や衣服を傷める危険

文=へるどくたークラレ
インフル&花粉対策…空間除菌商品は効果なし?誇大広告横行、人体や衣服を傷める危険の画像1不適正表示とされた例(「消費者庁 HP」より)

生化学分野に精通し、サイエンス・コミュニケーターとしても活動するほか、教育機関で教鞭も執っているへるどくたークラレ氏が、薬局で買える医薬品や健康・栄養食品を分析!配合成分に照らし合わせて、大げさに喧伝されている薬や、本当に使えるものをピックアップする。

 3月27日、消費者庁は景品表示法(優良誤認)に違反するとして二酸化塩素を利用した空間除菌を標ぼうする商品の販売会社17社に対して措置命令を出した。これらの商品は、それまで薬局薬店のレジ前や店の目立つ場所に「空間除菌」「インフルエンザ対策に」、果ては「花粉も除去する」などのPOPを掲げて売られていたので、ご存じの人も多いと思う。

 今回は、これらの商品にどのような問題があったのかを検証してみたい。

 今回のニュースで誤解してはならないのは、二酸化塩素に殺菌力がないわけではないという点だ。二酸化塩素は、水道施設での上水処理をはじめ小麦や米の殺菌消毒などに使用され、1994年からは食品添加物としても少量の残留が認められているほど安全性が高く、かつ殺菌効果が高い有用な成分だ。

 また近年は、悪臭の原因物質(カビ臭やアンモニア臭等)に対しても働き、無臭化を促進することが判明し、飲食店や公衆衛生の維持などに二酸化塩素噴霧器が使われるようになっている。

●二酸化塩素の殺菌能力

 ただし、十分な殺菌効果を得るためには数百ppm以上もの濃度で使用する必要があり、それは、その濃度にさらされていれば人間でも粘膜に炎症などを起こす可能性があるレベルだ。しかも、サルモネラ菌で数分、大腸菌やセラチア菌などは十数分二酸化塩素に暴露させないと無菌化には至らない。

 従って、少量の二酸化塩素を発生させるプレートを首から下げるだけで直径1m以内を無菌化できるなどと標ぼうしているのは、まるっきりデタラメなのは明らかだ。実際に、実験データを持っていないメーカーも多く、とにかく注意されるまでは売り続け、消費者庁から注意されたらやめればいいという思惑が感じられる商品だ。

 また、首から二酸化塩素を発生させるプレートを提げるということは、漂白力の強い二酸化塩素に衣類がさらされる可能性も大きい。商品が掲げている効果はない上に、かぶれや衣類漂白の可能性があるという、極めて悪質な商品だ。

 インターネット上では発売当初から、「首から下げるバカ発見機」と揶揄されていたが、それでも大ヒットしてしまったのは、悪質な売り逃げメーカーを多く発生させる現行法と行政の甘さに問題がある。消費者庁の対応の遅さもさることながら、措置命令という大層な響きのする命令を出しているが、ほとんど抑止力は働いていない。

へるどくたークラレ

へるどくたークラレ

覆面の不良科学屋。添加物を駆使した食欲の失せるカラフルな料理やら、露悪的で馬鹿げた実験を紹介していく、『アリエナイ理科ノ教科書』の著者、SFやミステリーの設定やトリックの監修も務める。こっそり大学でも教養課程で科学を教えていたりする。過去の連載をまとめた『薬局で買うべき薬、買ってはいけない薬』は好評発売中。公演やテレビ出演なども多数。無料のメールマガジンも配信している。

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