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JR九州、なぜ上場が急がれる?課題の安定基金、圧縮の方針で国交省と本格協議入り

文=編集部
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JR九州、なぜ上場が急がれる?課題の安定基金、圧縮の方針で国交省と本格協議入りの画像1JR九州の寝台列車「ななつ星in九州」(「Wikipedia」より/Rsa)
 九州旅客鉄道(JR九州)の株式上場に向けた動きが本格化してきた。同社は、1987年に旧国鉄から民営化した際に鉄道事業の赤字を埋める目的で国から拠出された「経営安定基金」(以下、基金/7月時点の残高は約3877億円)を、大幅に圧縮する方針で国土交通省と協議を始めた。実質的な「補助金」を持ったままの株式上場には批判も多いため、基金の規模を小さくすることでそうした批判をかわす狙いがある。

 JR九州の2014年3月期連結決算の売上高は前期比3.5%増の3548億円で、4期連続の増収で過去最高を更新した。営業利益は同19.7%増の90億円、当期利益は同91.2%増の115億円と、いずれも2期ぶりの増益となった。

 採算が厳しいローカル線が多く鉄道事業の営業損益は149億円の赤字。収益性の高いマンション販売や駅ビルなどの不動産事業と、コンビニエンスストア、ドラッグストアの小売事業などの関連事業の儲けで、鉄道部門の赤字を補い営業黒字にした。最終損益が大幅増益となったのは、基金の運用益で最終利益をカサ上げしたからだ。

 前述の分割民営化の際に、慢性的な赤字が予想されたJR九州、四国旅客鉄道(JR四国)、北海道旅客鉄道(JR北海道)の3島会社には国から資金が拠出された。JR九州は基金の一部を独立行政法人、鉄道建設・運輸施設整備支援機構に高利回りで貸し付けて運用している。市場金利が下がっても一定の収入が約束され利益を底上げしてきた。14年3月期の基金の運用益は120億円で前期より22億円増えた。関連事業の利益が鉄道事業の赤字を上回ったとはいえ、基金頼みの経営であることに変わりはない。

 上場するからには、まず基金を国に返済するのが先決との指摘もある。安定した経営には基金の運用益が欠かせないとしても、株式を公開して民間企業となる以上、基金を残しておくのは経済原理にそぐわないからだ。

●JR九州の上場が急がれる背景

 冒頭の基金圧縮案としては、九州新幹線を建設した鉄道建設機構に、新幹線の施設使用料の残金2000億円以上を一括して基金から前払いする案が浮上している。株式公開までに支払うことで、基金の規模を1000億円台にまで減らすというものだ。

 太田昭宏国交相は7月8日、JR九州の上場のあり方について有識者会議を設けて意見を聞くとの考えを表明したが、同会議で基金の問題がテーマなることは間違いない。基金は年間150億円前後の赤字を出している鉄道事業の支援を目的としており、新幹線の施設使用料の支払いに基金を使うことは、本来の目的とは外れる。基金の残高を1000億円台に圧縮しても基金は存続する格好となるが、JR九州は株式公開により名実ともに民間企業になるため、実質的に政府からの補助金が存続することが今後、上場に向けた大きな課題となる。

 現在、JR各社の中で基金というかたちで政府から支援を受けているのは、JR北海道、JR四国、JR九州と日本貨物鉄道(JR貨物)だ。政府内では地理的条件を踏まえて根本的な救済策が検討されており、JR北海道をJR東日本が、JR貨物をJR東海が、JR四国とJR九州の2社をJR西日本がそれぞれ統合・合併などのかたちで救済する案が有力視されてきたが、JR西日本に2社を支える企業体力はない。

 そうした状況の中、政府としてはJR九州を一刻も早く上場させ、独り立ちさせたい。同社の上場が急がれるのは、こうした政治的背景があるとみられている。
(文=編集部)

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