スタッフの大半がアルバイト従業員で占められるコンビニエンスストア店舗の人手不足が深刻さを増すなか、フランチャイズ(FC)店舗オーナーとみられる人物がインターネット上に投稿した以下の内容が一部で話題となっている。
「年中バイト募集の張り紙貼ってあるけど人が来ない」
「10年ぐらい前だとこんな事はなかった。『使えない』と思ったら、即クビ切って、バイトの代わりなんていくらでもいた」
「さっさとクビにしてきた人たちですら今ではすごく良い人材に思える」
「数年前から10連勤ぐらいは当たり前、月の休みは取れても4~5日しかない」
こうした状況は現在、コンビニ業界では一般的なものなのか。また、人手不足に悩む店舗とうまくいっている店舗の差を生む要因は何か。専門家の見解を交えて追ってみたい。
セブン-イレブンは2万1651店舗(2024年12月時点)、ファミリーマートは1万6245店舗(同)、ローソングループは1万4643店舗(24年2月時点)を展開し、国内に5万7000店舗以上あるとされるコンビニ。そこで働くアルバイト従業員の数も大きな規模で、大手3社で約80万人に上るといわれ、24年5月15日付共同通信記事によれば、その約1割が外国人だという。
クレーム対応やイレギュラー対応も多い
コンビニのアルバイト店員の採用難は、実際に現場ではかなり深刻になっているのか。小売業などへのコンサルティングを手掛けるBelieve-UP代表取締役の信田洋二氏はいう。
「都心部の店舗でもそれ以外でも、ともにアルバイト店員の確保は非常に困難な状況です。コンビニ店員の時給は各地域の最低賃金に近い金額ですが、飲食店や他業態の大手チェーン系の小売店は時給が上昇しており、また全業種で人手不足が進んでいるため、働く側は『多くの選択肢のなかから、より時給が高くて割に合う仕事を選べる』状態になっています。コンビニの業務は非常に多岐にわたり覚えなければならないことが多く、クレーム対応やイレギュラー対応も多いため、割に合わない仕事になっています。
以前からコンビニは、景気が良いと時給が高くなった他の業態に人を取られて人を確保しにくくなる一方、不景気が悪くなって他の業態が人を減らしてもコンビニだけは一定の人数を雇用するので『雇用の最後の砦』といわれてきましたが、ここ数年は採用難がますます深刻になっています。最終的に店員不足の穴を埋めるのは店長なので、店長はひと月にほぼ休みなしで働くといったブラックな労働を強いられるケースが増えています。
大きな社会的背景としては65歳以下の人口減少があげられ、コンビニ運営は外国人の学生アルバイトがいないと回らない状況になりつつありますが、円安が進んで日本に来る外国人が減少すれば、さらに問題は深刻化する恐れがあります。実際にコンビニ店舗の実態をみてみると、かつては多かった中国、韓国からの方はほとんどいなくなり、フィリピンやベトナムの方も徐々に少なくなってきており、カンボジア、ミャンマー、ネパールの方がみられるようになっています。このまま円安が進めば、ますます日本は海外から見放されるのではないでしょうか」(信田氏)
「これをやれば採用難が解消される」といったものは、ない
コンビニも手をこまねいてばかりではない。セルフレジの導入などさまざまな施策を進めている。
「セルフレジを入れても有人レジは残しておく必要があり、レジ横の中華まんなどのホットスナックの調理・補充・包装、宅配便の預かりなどのために一定の数の人手は必要です。コンビニ店員の業務は定型業務が多いと思われがちですが、実際にはクレーム対応を含めたイレギュラー対応が大半であり、決まりきった単純なルーティン作業というのはほとんどありません。たとえば、多岐にわたる機能を持つマルチコピーひとつとっても、いろいろなタイプのお客さんから操作に関するいろいろな質問を受けて、それに対応していかなければなりません。店舗オペレーションというのは個別対応の集積なので、店長がいない時間帯にはスキルのあるリーダークラスのアルバイト店員を含めて最低2人は配置しておかなければならなかったりします」
人手不足のなかでも、アルバイト確保が順調にいっている店舗と苦労している店舗では、どのような差があるのか。
「結論からいえば、『これをやれば採用難が解消される』『こういう方策をとれば応募者が増える』といったものは、ないといっていいでしょう。お金をかけてアルバイト募集のサイトに告知を出しても効果が出るわけではなく、そうした会社に相談しても『より目立つ場所に募集を出しましょう』と高価格なメニューを提案されるだけです。採用した人材をどうすればより効率よく育成できるのかといったことは、いくらでも方策はありますが、応募がなくて採用できないという課題に対しては有効な手段がないのが現実です」(信田氏)
(文=Business Journal編集部、協力=信田洋二/Believe-UP代表取締役)