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政府 エボラ熱の未承認薬提供、なぜ富士フイルム株価上昇?新主力・医薬事業飛躍の弾みに

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富士フイルムホールディングス本社(「Wikipedia」より/Rs1421)
 8月26日、富士フイルムホールディングスの株価は3256.5円と年初来最高値を付けた。前日25日に菅義偉官房長官が、西アフリカで感染者が急増しているエボラ出血熱に効く可能性がある未承認薬について「一定の条件下で提供する用意がある」と述べたことを材料に買われた。

 提供が検討されているのは、富士フイルムHD傘下の富山化学工業がインフルエンザ治療薬として開発したファビピラビル(商品名・アビガン)。日本では14年3月24日にインフルエンザ治療薬として承認されているが、エボラ出血熱に効く可能性が指摘され、WHO(世界保健機関)から日本に照会が寄せられていた。菅官房長官は「WHOからの要請があれば、未承認薬を提供する用意がある」と説明。さらに「WHOの結論が出る前であっても、緊急の場合は一定の条件下で個別の要請に応じる用意がある」と踏み込んだ発言をした。

 それに先立つ8月8日から、すでに富士フイルムHDの株価は上昇を始めていた。米通信社ブルームバーグが7日に「米国防総省のエイミー・デリックフロスト報道官の証言として、今後、エボラ出血熱に感染したサルにファビピラビルを投与して効果を確認する作業を進め、9月中旬には暫定的な試験効果が得られる見通しである」と報じた。
新薬の期待が富士フイルムHDの株価を押し上げ、8日には3229.5円を付けた。さらに、菅官房長官の発言を受けて年初来高値をさらに更新したのだ。

 富士フイルムHDはエボラ出血熱の患者2万人以上に投与できる量の同薬の在庫があるという。今後も連続的に生産・供給する体制が整っている。WHOへの提供が決定すれば、同社の株価が急騰するのは確実。上場来の高値はリーマン・ショック前の07年11月1日の5710円だが、証券市場ではこれに迫るという強気の見方が出ている。

●富山化学とは、どのような企業?


 ファビピラビルを開発した富山化学は、1936年に設立された医療用医薬品の製造・販売会社。以前は抗生物質と抗菌剤が収益の柱だった中堅の製薬会社だ。2002年9月に大正製薬と資本・業務提携し、大正製薬が筆頭株主になり、08年3月には株式公開買い付け(TOB)により富士フイルムHDの傘下に入った。それに伴い東証・大証の上場を廃止し、富士フイルムHDが66%、大正製薬ホールディングスが34%出資するかたちになった。

 一方、富士フイルムHDは1934年に富士写真フイルムとして設立された写真フィルムメーカーだが、2000年以降のデジタルカメラ普及に伴い、本業の写真フィルムが消滅する危機に立たされたため構造改革を断行。フィルム技術を転用した液晶材料や医療事業などに経営資源をシフトさせた。そして06年11月、富士フイルムや複写機の富士ゼロックスを傘下に持つ持ち株会社体制に移行し、社名から「写真」を除いた。08年3月期にはV字回復を実現。過去最高益を達成した。同年には医療事業を強化するため富山化学を子会社に組み入れた。

 写真フィルム中心の会社から液晶フィルム、医療機器・医薬品に事業構造を転換し、14年3月期の売上高は前年同期比10%増の2兆4399億円、営業利益は同23%増の1408億円と2期連続の増収増益となった。事業は3本柱で、稼ぎ頭は富士ゼロックスの複写機、複合機などがメインのドキュメント ソリューション部門。同部門の14年3月期の売上高は前期比12%増の1兆1325億円、セグメント別営業利益は26%増の960億円で、全社売り上げの46%、営業利益の68%を叩き出している。