住商はアフリカで世界最大級のニッケル鉱山開発を進めているが、操業開始が大幅に遅れたほか、市況急落もあり、14年度中にも損失を計上する可能性があるという。そうなれば住商の同年度決算は一気に赤字に転落することとなり、株式市場を大きく揺さぶるのは確実。
住商は2年前に米テキサス州で権益を取得したシェールガス開発事業で、採掘コストが想定以上に膨らんだことに加え、可能な採掘量も大幅な下方修正に追い込まれた。オーストラリアの石炭開発などでも収益が悪化したため、合計で2400億円の損失を計上した。この結果、2500億円としていた同社の14年度最終利益は、わずか100億円にとどまることがすでに発表されている。
当然ながら同社の株価は急落したが、「損失を早めに計上した姿勢は評価できる」(証券アナリスト)と好感する声も少なくない。開発ラッシュに沸いたシェールガスでは最近、米国企業を含めて損失計上が相次いでおり、市場は「一定のリスクは想定内。問題は隠蔽せずに正直に公表するかどうかだ」(アナリスト)と受け止めている。
特に、有望なシェールガス田はすでに権益が押さえられており、住商のような後発組は採掘の難しい高リスクの地域しか残っていない。大阪ガスや出光興産も損失を計上しており、住商も「資源開発で想定される範囲内のリスク」と強調している。
●損失計上額は最低でも2000億円か
しかし、住商がニッケル鉱山開発でも巨額損失を抱えているとなれば深刻な事態となる。
住商のニッケル鉱山開発はカナダや韓国企業と共同で進められており、本来であれば3年前にニッケル生産が始まっているはずだった。だが鉱山労働者のストライキや現地政府の政権交代も重なって工事が大幅に遅れ、今年に入ってようやく一部の生産が始まったばかりだという。来年半ばにも本格生産に移行させたい構えだが、ニッケル価格は昨年から急落している。このため「鉱山開発の遅れと国際市況の低下で、住商の損失は最低でも2000億円はあるはずだ」と業界関係者は語る。