2012年の世界の石油消費量は42億2050万トンであった(省エネルギーセンター資料)。一方、運輸部門のエネルギー消費量は石油換算で25億700万トンである。これはほとんど石油と考えられるから、世界の交通は石油の59.4%を使っていることになる。
運輸部門には、自動車のほかに鉄道、船舶、航空機がある。これらが消費するエネルギーのおよそ90%を自動車が占める。したがって、自動車は世界の石油生産量の53%近く、つまりおよそ半分を燃やしてしまうことになる。自動車の石油依存度はきわめて高い。石油有事となれば、まず自動車交通がダメになるわけだ。そして、20年にはもっと依存度が高まると考えられる。
12年の世界の自動車保有台数は、およそ11億1500万台だ。これが20年にはおよそ15億台になるといわれており、現在の1.3倍にあたる。もし、石油の生産量が増えず、燃費も改善されないとすると、自動車は世界の石油のおよそ70%を使ってしまうことになるが、石油は自動車以外でも使うので、自動車だけで70%も使うわけにはいかない。自動車以外の分野の代替エネルギー化を進めるか、石油生産を増大させ、自動車の石油依存度を12年レベルにする必要がある。
そのために必要な増産量は、およそ7億2000万トン。12年の世界の生産量を5年間で17%引き上げなければならない。これはサウジアラビアがあと“1.24国”必要なことを示している。ご存じのように、サウジアラビアは世界最大の石油生産国である。それがあと1国以上必要だということは、きわめて憂慮すべき事態だ。ちなみに、05年から12年までの7年間の石油生産の伸びは6.8%である。
水素自動車は燃費が悪い?
このように、石油に代わるエネルギーの早急な開発と生産が求められる。そこで水素が注目を集めている。しかし、自動車を水素で走らせれば石油依存度も大幅に低下でき、世界の石油不足も解決できると単純に考えてはいけない。
4月17日付当サイト記事『“面倒くさい”燃料電池車、「環境にやさしい」はまやかし?燃費もガソリン車以下?』でも説明したように、水素は掘っても出てこない。石油、天然ガス、石炭等を改質するか、水を電気分解して作るしかない。
石油等の化石燃料から作るには、電力などのエネルギーを使って、水素と結合している炭素を剥がす必要がある。その工程で炭素は酸素と結びついて二酸化炭素(CO2)になる。やはり二酸化炭素は出る。一方、水を電気分解するには電気が必要だ。その電気を火力で発電すれば、やはり二酸化炭素は出てしまう。