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舘内端「クルマの危機と未来」

“究極のエコカー” 燃料電池車の化けの皮 ガソリン車より燃費悪く、多くのCO2排出

文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表

 このように、燃料電池車は走行中には二酸化炭素も排ガスも出さないが、燃料の水素の製造段階で二酸化炭素を排出する。これは電気自動車も同じだが、電気自動車の走行距離当たりの二酸化炭素排出量は、燃料電池車のおよそ5.5分の1である。ではガソリン自動車はどうだろうか。

 ガソリンが1L(リッター)燃えると、2320gの二酸化炭素が出る。例えば、10km/Lの燃費とすると、二酸化炭素排出量は走行距離10km当たり2320g、1km当たり232gである。

 この燃費で1カ月に1000km、年間1万2000km走ると、2784kg(2.784トン)の二酸化炭素を出すことになる。この値が、日本の自動車オーナーの平均的な二酸化炭素排出量ではないだろうか。ちなみに、EUの15年の規制値は、同じ条件であれば1.44トンであり、20年には1.14トンに削減される。

 さて、燃料電池車の平均的な水素消費量、いわゆる燃費は100km/kgだ。つまり、水素1kgで100kmほど走れる。この水素を水の電気分解で作ると25.5kgの二酸化炭素を排出する(経産省の燃料電池車実証試験データ)。1km当たりでは255gとなる。

 こうしてみると、燃料電池車は10km/Lのガソリン車よりも燃費が悪いことになる。平均的な燃料電池車の燃費をガソリン車に置き換えてみると、リッター9.1kmとなる。これが究極のエコカーの実態だというわけにもいかないので、関係者は必死に対策を練っている。果たして解決はできるのか。

 そこで神奈川・横浜で行われるメディア対象の燃料電池車・MIRAI(トヨタ自動車)の試乗会に出かけてみることにした。次回は、その様子をお伝えしよう。
(文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表)

舘内端/自動車評論家

舘内端/自動車評論家

1947年、群馬県に生まれ、日本大学理工学部卒業。東大宇宙航空研究所勤務の後、レーシングカーの設計に携わる。
現在は、テクノロジーと文化の両面から車を論じることができる自動車評論家として活躍。「ビジネスジャーナル(web)」等、連載多数。
94年に市民団体の日本EVクラブを設立。エコカーの普及を図る。その活動に対して、98年に環境大臣から表彰を受ける。
2009年にミラEV(日本EVクラブ製作)で東京〜大阪555.6kmを途中無充電で走行。電気自動車1充電航続距離世界最長記録を達成した(ギネス世界記録認定)。
10年5月、ミラEVにて1充電航続距離1003.184kmを走行(テストコース)、世界記録を更新した(ギネス世界記録認定)。
EVに25年関わった経験を持つ唯一人の自動車評論家。著書は、「トヨタの危機」宝島社、「すべての自動車人へ」双葉社、「800馬力のエコロジー」ソニー・マガジンズ など。
23年度から山形の「電動モビリティシステム専門職大学」(新設予定)の准教授として就任予定。
日本EVクラブ

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