世界最大の広告祭「カンヌライオンズ」訪問レポート 世界の経営とマーケはここまで進化!
「広告」にとどまらず「経営」に近づくカンヌライオンズ
世界最大級の広告・コミュニケーションの祭典「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」が、今年も6月下旬にフランスのカンヌで開催された。62回目を迎えた今年は、世界90カ国から約1万3500人が参加し、カンヌの街中は広告関係者であふれ返っていた。
同イベントは、2010年まで「カンヌ国際広告祭」として、広告表現の博覧会・品評会のような位置づけだったが、11年から現在の名称に変わり、広告という概念を超えて広くクリエイティビティを評価するものになっている。
筆者も、長らくマーケティング関連のコンサルティングを専門としており、広告業界に近いポジションにいる。それでも、「カンヌ」はテレビCMなどの広告やクリエイティブに携わる人がメインのお祭りであり、経営やマーケティング戦略に携わる側にとっては、関係の薄いものだと認識していた。
しかし、実際に足を運んでみると、想像以上に経営やマーケティング戦略に関係するフェスティバルであることがわかった。
例えば、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)やユニリーバ、ネスレ、コカ・コーラ、ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニーなど、世界的な企業のトップマーケター(主にマーケティングの最高責任者)によるセッションが多数行われた。
そこでは、事業やブランドの成長およびイノベーション(技術革新)の実現に向けて、どのように顧客インサイト(顧客理解)を抽出し、新たなテクノロジーと結びつけて活用するか、PDCAサイクル(「計画」「実行」「確認」「行動」の4つで構成される行動プロセス)をどのように回すか、社内の各部門や外部のステークホルダー(利害関係者)とどう協業していくかなど、経営やマーケティングの観点から深い示唆を与えてくれるものが多かった。
また、イベントのメインである各部門の受賞作品(アワード)の選定についても、表現の新しさやユニークさだけでなく、ビジネスとしての「インパクト」の大きさや、「ゲーム・チェンジ」ができたか(既存の競争のルールなどを変える革新的なものか)が非常に重視されており、ここでもクリエイティブから経営に近づいている様子が見られた。