世界最大の広告祭「カンヌライオンズ」訪問レポート 世界の経営とマーケはここまで進化!
「スケール」を追求するグローバル企業、「効率化の罠」にはまる日本企業
では、P&Gやユニリーバなど、マーケティングのトップを走るグローバル企業は、どこに向かおうとしているのだろうか。今回、多くのCMO(マーケティング最高責任者)に共通していた言葉は「スケール」だ。
彼らは、国や地域によって社会環境や文化の違いが存在することを認めつつ、それ以上にソーシャルメディアの普及により、国境を越えて多くの人々が同じような情報やコンテンツに瞬時に触れることができ、「共通する価値観や問題意識」を持ちつつあることに着目している。
そして、そのようなスケールを獲得できるテーマを見いだし、いかにブランドと関連づけるかという点を重視していた。
一方、日本企業は、いわばその対極にある。メディア環境の変化により、これまでのようなテレビや新聞を中心とした「マス」によるアプローチが、若年層を中心に非効率的になってきた。
さらに、DSP(デマンドサイドプラットフォーム:オンライン広告において、広告主の利益が最適化された広告配信プラットフォーム)やDMP(データマネジメントプラットフォーム:自社および外部のデータを一元管理するプラットフォーム)など、“個客”別のアプローチが可能なアドテクノロジー(広告技術)が利用できるようになった。
それにより、マーケティングを強化している企業ほど“脱マス”を進め、顧客の嗜好などの違いに応じたセグメント別のアプローチを取るなど、コミュニケーションの「効率化」に向かっている。
もちろん、効率性を追求すること自体に問題はない。しかし、それを追求するあまり、スケールを獲得することが忘れ去られ、縮小均衡のこぢんまりとした状態になりつつある。
ピーター・ドラッカーの言葉を借りれば、「企業の目的は顧客の創造」にある。それを踏まえれば、効率化は魅力的な分野に多く投資する、キャッシュを捻出するための手段だ。あくまで、最終的なゴールはスケールの獲得である。