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ROEブームのまやかし 利益をひたすら自社株買いに浪費する愚行

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アベノミクスの成長戦略(「首相官邸 HP」より)
 2014年5月16日、金属加工機械国内首位のアマダホールディングスの株価は、前日比16%も上昇した。「利益の半分を配当に、半分を自社株買いに充てる」と株主への利益分配の割合を100%にする方針を示したことが、株式市場で好感を持たれた。アマダは自社株買いによってROE(株主資本利益率)を高め、株価を上昇させることを目指すとした。アマダの決断は驚きをもって迎えられたが、今年に入り空前のROEブームが到来している。


 ROEは最終的なもうけを示す最終損益を自己資本で割って算出する。アマダの収益体質は良好だが、自己資本比率が75%(15年3月末で73.8%)と厚いことが災いして、ROEは相対的に低かった。そこで打ち出したのが、純利益を全額配当と自社株買いに回す手法だった。

 アマダは16年3月期までの2年間、純利益の全額を株主に還元するのに続き、17年3月期以降も連結配当性向で50%以上を維持する。利益の半分を配当に回すという手厚い施策を続けて自己資本が積み上がるのを防ぎ、ROEの向上につなげる方針だ。

 16年3月期の純利益は前期比25%増の230億円(15年3月期は184億円)を見込む。年間配当は32円(同26円)と6円増やし、100億円を上限とする自社株買いを実施する。ROE(15年3月期、4.4%)を5.4%に引き上げる予定だ。

自社株買いに走りだす


 ROEブームの背景には、アベノミクス第3の矢である「民間投資を喚起する成長戦略」がある。低すぎる日本企業のROEを高め、海外の投資家をもっと日本の株式市場に呼び込むという狙いだ。安倍晋三政権が6月末に閣議決定した改訂版・日本再興戦略の要諦をなすものだ。

 東京証券取引所と金融庁が策定したコーポレートガバナンス・コードと呼ばれる企業統治指針が6月から運用開始となり、資本効率を高め、その目標を株主に明確に示すよう求めている。東証株価指数を構成する企業の平均ROEは8%(金融を除く)。米国の代表的株価指数であるS&P500種は22%(同)、ドイツのDAX指数は12%(同)となっており、欧米の企業に比べて低い。安倍政権の方針を受けて、日本企業は一斉に自社株買いに走り出した。

 企業が自社株買いに投じた金額は、自己資本の項目でマイナスにカウントされる。企業にとっては、利益水準は変わらなくても自己資本を減らすことができる。自社株買いはROE改善の早道になる。