日本生命にとっては提携の最大のメリットは販路開拓。ドコモショップは全国に約2400。来店客の年齢層も幅広いだけに、保険会社にとっては接点の少ない若年層も含めてアプローチできる貴重な販路になる。
問題はそれだけ実効性があるかだが、若年層をターゲットに携帯電話と生保を組み合わせて契約することによる「セット割」などの提供が想定されるが、金融関係者は首をひねる。
「固定光回線とのセット割と同じ発想だろうが、生保はいつ必要になるかわからない商品ながら、支払う総額が大きい。そのような商品に携帯ショップで気軽に加入するのか」(銀行関係者)
競合の外資系生保幹部は「新しい販路開拓の一環ではあるが、日本生命にしてみれば、マーケティングの意味合いが大きいのでは」と見る。実際、携帯電話アプリなどを通じた個人の健康習慣や行動のデータ取得が真の狙いとの見方は根強い。
保険商品は年齢と持病の有無で保険料が決まるが、海外では運動などで健康状況が良くなれば保険料を下げるサービスは珍しくない。仏アクサは2013年にフランスでランナー向け保険料割引サービスを開始。毎日7000歩または1万歩以上を1カ月続けた場合、保険料の割引が受けられる。アクティビティトラッカーと呼ばれる心拍計が付いた記録装置は無料で提供する。
日本生命は今回の提携でこうしたサービスの展開について否定しているが、顧客情報をビッグデータ解析して保険料に反映する世界的な流れには抗えないだろう。
「運動習慣にとどまらず、南アフリカの保険会社ディスカバリーは契約者の遺伝情報解析にまで乗り出している。日本生命がスマートフォンのアプリを活用して、顧客の生活習慣などの情報を収集して新たな保険モデルを構想しているのは間違いないだろう」(国内大手生保関係者)
競合他社も参入が予想される中、日本生命が先陣を切ったのは経営資源の豊富さも関係しているだろう。保険販売には専門の資格も必要となるため、保険会社がショップに指導担当の人員を派遣する。日本生命もドコモでの取り扱いを数十店舗から始め、順次拡大するという。