2014年度決算での三大キャリアの営業利益は、NTTドコモが6391億円、KDDIが7413億円、ソフトバンクは9827億円と1兆円に迫る勢いとなっており、確かに消費者からすれば「儲けすぎ」と感じられるかもしれない。この莫大な利益も安倍首相の言う通り、ユーザーが支払う高すぎる携帯料金がもたらした恩恵なのだろうか。そこで、ITジャーナリストの三上洋氏に話を聞いた。
「『ARPU』というひとつの契約ごとの売り上げを示す客単価のような指標があるのですが、それが従来型携帯電話(ガラケー)時代よりはるかに上がっています。ガラケーは安ければ3000円程度で持てていたのに比べ、スマートフォン(スマホ)はデータ無制限のプランだとどんなに安くても5000円を割ることはありません。『スマホは便利』で『ガラケーは時代後れ』という世の中の風潮がありますが、キャリアはそうは見ておらず、キャリアにとってスマホは『ARPUをあげるためのモノ』というわけです」(三上氏)
つまりキャリアとしては、顧客にいかにガラケーからスマホへ乗り換えさせるかが至上命題となってくる。
「各キャリアからは数年前まではガラケーの新機種すら出ていない状況でしたが、近年頑なにガラケーを使い続ける層が一定数いることがはっきりしたため、『ガラホ』を発表するなどキャリアは対応せざるを得なくなっています。そして、さらにキャリアにとって逆風となる存在なのがMVNOです」(同)
MVNOとは「Mobile Virtual Network Operator」の略で、自社でモバイル通信のネットワーク設備などを持たず、大手通信キャリアの回線を一部買い上げて、オリジナルのパッケージをつくって安価に通信サービスを提供している事業者のことだ。
「MVNOの通信料金は、三大キャリアのそれよりもはるかに安くなっています。安倍首相の発言をはじめ、最近になってスマホ料金の高さがクローズアップされたことで、『MVNOのほうがお得だよね』と感じるユーザーが増加傾向。むしろ、三大キャリアから通信回線を借りてユーザーに提供しているMVNOのほうが安く、『小売よりも卸のほうが高額とはどういうことだ』という怒りさえ覚える消費者も多いのではないでしょうか」(同)