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メチャクチャ運営騒動のツタヤ図書館、共同事業者を激怒させたツタヤの問題行動

文=佐伯雄大

図書分類問題

 企業理念の違いは、実は図書館運営に関するプライドの問題でもあった。特にTRCを刺激したのが、CCCが独自に構築したという「ライフスタイル分類」という新たな図書分類だ。ライフスタイルの提案を訴えるCCCらしい分類方法ではあるが、問題はその中身にある。

 よく指摘されるのが『旧約聖書出エジプト記』が旅行の棚にあるなど、その分類があたかもタイトルを頼りに振り分けているとしかみられない点だ。さらに、そう訝るのにも理由がある。パートナー企業であるTRCにすら、その分類方法は「企業秘密」として公開していないからだ。入荷・返却された本をどこに置くか、スタッフが図書を配架する際にも元の場所がわからないという混乱もあった。従来の図書館のNDC分類が完璧とはいえないものの、「ライフスタイル分類」への疑問は付きまとう。

「これまでの図書館の価値観を否定して、CCCによる新しい図書館の価値観を示すのが彼らのスタンスだったはず。とすれば、これまでの図書館を支えてきたTRCを見下そうとしていたのはわかる。書店業界においても、当初は雑誌売り場としかみられていなかったCCCが運営するTSUTAYA(ツタヤ)が書籍も売っていこうと書店化に取り組んだときも、これまでの書店のやり方に否定的でした。20年前は再販問題との絡みでタブーだった『ポイントサービス』や『古本販売』にいち早く取り組んだのもツタヤでした」(出版業界関係者)

一転、和解へ

 こうしたTRC・石井社長の怒りがついに噴火したのが、10月26日付業界紙「文化通信」の記事だった。この報道を皮切りに、一般紙やネットメディアがこぞってこの問題を取り上げた。10月28日には日本経済新聞がいち早く、海老名市立図書館における「共同企業体の解消はなくなった」と報じ、10月30日の和解会見へとつながっていく。

 その後、CCCとTRCの問題はあっという間に収束したのだが、図書館関係者は語る。

「実は11月15日(8日告示)に海老名市長選が行われる。内野市長は4選出馬を表明していた。10月1日の海老名市立図書館のリニューアルオープン、29日のららぽーと海老名のグランドオープンと2つの施設の成功を手土産に、再選を果たそうと計算していたのではないかとみられています。ららぽーと海老名は大盛況だったが、海老名市立図書館で味噌を付けられた。CCC とTRCの不和を放置していては、指定管理を進める市長にも逆風となる。そこで、早急な手打ちを両社に迫ったのでしょう。TRCは指定管理業者として多くの自治体と取引関係にあるため、海老名市とケンカをしてまで契約を破棄するような無茶はできない。結局は27日、28日と2日にわたって市と両社の3者で話し合い、市長が両社を説き伏せたようです」

 今回の一件が、広がりつつある自治体による公共施設の民間業者委託の動きに一石を投じたのは間違いないだろう。
(文=佐伯雄大)

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