「爆買い」が年間大賞を受賞したのは下馬評通り。授賞式では中国人観光客が多数訪れる国内最大の免税店チェーンを展開するラオックスの羅怡文(らいぶん)社長が登壇し、「爆買いは世界の消費者に日本の商品が愛されている証し」と語った。だが、爆買いは日本の消費に多大な貢献をした一方で、爆買いパワーに悲鳴を上げる地域も現れた。
長崎県は12月2日の県議会の一般質問で、長崎市に寄港する来年のクルーズ船予約75回分について、県の出先機関が十分な警備体制が取れないと判断し、いったん断っていたことを明らかにした。その後、体制を見直し、各クルーズ船の代理店に受け入れ可能と通知したという。
<県によると、今年のクルーズ船の長崎市寄港は131回の見込み。来年の寄港について、長崎港湾漁港事務所が7月時点で200回の予約を受け、大幅に増えるため受け入れ困難と独自に判断したという。同事務所は11月末までに、今年の約1.4倍に相当する186回の予約を受け付けている>(12月3日付西日本新聞)
長崎県はクルーズ船の誘致を進めており、中村法道知事は「現場の判断で断ったのはあり得ない」と激怒。一般質問で県議は「誘致する一方で断るのは観光都市として県の信頼を失墜させた」と批判した。西日本新聞はいったん断り受け入れ可能と通知したのちに、再度予約していなかった58回分のクルーズ船の観光消費額は32億円と試算している。
ネックは入国審査
長崎県の港湾漁港事務所がクルーズ船の寄港を拒否したことについて、「無理もない」と同情の声が上がる。殺到する中国人旅行客の数に、受け入れ態勢が追いついていないのが実情だからだ。海外のクルーズ船誘致でもっとも重視すべきは、入国審査の迅速化とされる。日本は海外に比べてクルーズ船の入港時における入国審査に時間がかかる。平均8時間程度の滞在のうち入国審査に2時間を要していては、旅行客に「お金を落として」もらえない。
審査手続きは法務省の管轄のため、地元自治体ではやれない。クルーズ船が入港した際に自治体が職員を送り込み、入国審査の迅速化をはかるという人海戦術は取れない。そのため長崎は、入国審査業務をやっている福岡に応援を頼むことになる。福岡にもクルーズ船が寄港すれば、その審査に追われ長崎まで手が回らない。1日に2隻のクルーズ船が寄港すれば、長崎の受け入れ態勢は完全にパンクする。だからクルーズ船の受け入れ拒否という挙に出たわけだ。