訪日外国人客数が想定を超えるペースで急増している。日本政府観光局がまとめた1~9月の訪日外国人客数は1448万人と前年同期比で48.8%増えた。昨年の通年実績(1341万人)を上回り、年間2000万人の到達が視野に入ってきた。国・地域別では中国が2.1倍の383万人と、大幅に伸びた。
訪日客の消費額も増えた。1~9月の訪日外国人客の消費額は前年同期比77.0%増の2兆5967億円。過去最高だった14年通年の2兆278億円を更新した。通年の消費額は3兆円を超える勢いだ。
7~9月期は1兆9億円で、四半期として初めて1兆円を超えた。国・地域別では、中国が4660億円でトップ。中国人客の1人当たりの旅行支出は前年同期比19%増の28万円となった。このうち14万円を買い物に充てた。全外国人1人当たりの買い物代の平均は7万円。中国人はその倍と突出している。観光・レジャー目的の中国人の日本での宿泊日数は、平均6.1泊に増えた。旅行期間の長期化が、1人当たり消費の増加につながった。
中国経済の減速で訪日客数が減るとみられたが、中国からの旅行者数は絶好調だ。日本に寄港する格安のクルーズ船が急増。9月だけで1年前よりも9万人も多い12万人が、船で日本を訪れた。
東京や大阪の大手百貨店は、中国人の「爆買い」で「昨年1年分を半年で稼いだ」と沸き立っている。大手百貨店4社の10月の売上高(速報分)はそろって前年比プラスとなり、7カ月連続で増加した。大丸松坂屋を運営するJ.フロントリテイリングは前年同月比4.5%増、三越伊勢丹ホールディングスは3.4%増、高島屋は6.6%増、そごう・西武が3.0%増だった。
中国人が爆買いできるのは、アベノミクスで円安が進み、相対的に中国・人民元の価値が上がり、日本での買い物に割安感が増したからだ。ビザ(査証)の発給要件の緩和が後押しした。中国の景気減速に加え、免税対象品目の拡大から1年経過したこともあり、中国人の消費の伸び率は鈍化するのではないかと懸念されていたが、各社とも倍増した。10月の訪日外国人の免税売上高はJ.フロント、高島屋、三越伊勢丹が、そろって1.9倍に拡大した。
注目されるのは、爆買いがいつまで続くかということだ。
銀聯カード使用の規制強化
中国国家外貨管理局は、銀聯カードを使って海外で銀行口座から引き出す際の金額に新たな上限を設けた。現在、1日につき1万人民元(約19万円)となっている使用可能限度額を、16年1月1日から年間10万人民元(約190万円)に変更する。