2016年は銀行によるITベンチャー企業の買収や出資が大幅に増加するだろう。15年12月、金融庁は銀行グループによる新興IT企業の買収を個別に認可する規制緩和を行う方向であり、16年の通常国会に銀行法など関連法の改正案を提出すると報じられた。
現在、銀行持ち株会社は本業関連以外の企業への出資は最大15%に制限されており、銀行本体が出資する場合は最大5%とされている。しかし、今後は銀行持ち株会社の子会社を通じての買収などが可能になるという。
なぜ今、お堅い銀行がベンチャー投資なのか。実は今まさに世界で金融ビジネスを根底からひっくり返すようなことが起きているからだ。
フィンテックとは?
筆者は日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)に約13年間在籍した後、NTTドコモのiモード企画部担当部長として金融とITを融合させた携帯電話を使ったクレジット事業の企画・立案・実行を担当した。あれから約10年、世界の金融サービスは日本のはるか先に進んでしまった。それが今話題のフィンテック(Fintech)だ。
フィンテックとは、Finance(金融)とTechnology(技術)を融合させた造語だが、ここでいう金融はかなり広い概念で使われている。
具体的には、早くて安価で使いやすい為替や送金(個人間送金、海外送金)、決済(店舗やインターネットでの決済、クレジットカード)、個人からの資金調達、人工知能(AI)を使った資産運用、手数料無料のネット証券や個人ごとの行動履歴に連動した保険など、実に多様だ。
さらにスマートフォン(スマホ)の家計簿アプリから企業の請求書発送代行、それらのデータや取引等のビッグデータを基にした企業や個人への融資、さらにはお金という概念を変えてしまうようなビットコインなどの暗号通貨や仮想通貨と呼ばれるもの。そしてそれら通貨の技術的基盤方式であるブロックチェーンの他分野への応用サービス(ビットコイン2.0)まで、まさにあらゆるお金に関する事業が革命的に変化しつつある。
つまり、ITを使うことで誰でも安価に簡単に利用できる金融サービスが、世界では次々に登場してきているのだ。スマホやSNSなどのソーシャルメディアがそうした新しいサービス普及の大きな要因といえる。このままでは世界の金融から取り残されてしまうという危機感から、日本の大手銀行もようやく重い腰をあげてフィンテックに対して積極的に取り組むようになってきた。