筆者も金融とITの両方を経験したなかで、物流がない点などで金融とITとは非常に相性が良いとの実感がある一方で、金融は銀行法、資金決済法、貸金業法、出資法など数多くの複雑な法規制が多数ある業界であるため、新しいビジネスモデルを検討する前に諦めてしまったアイデアが数多くあったのも事実だ。今それらの規制が日本でも大きく変わろうとしている。
米国でのフィンテック企業へのベンチャー投資額も急増しており、今最もっともホットな業界であることに間違いない。米国ではこの14年以降、Square(スクエア)やLending Club(レンディングクラブ)などが上場を果たし50社以上が買収されたといわれる。世界ではすでに1000社以上が登場しているとされるが、日本ではまだビジネスチャンスがあるのではないだろうか。
フィンテックベンチャー
では、具体的に世界ではどのようなフィンテックベンチャーが登場しているのかを俯瞰してみたい。それらの多くは従来の金融機関が提供していた同様のサービスと比較し、手数料が10分の1以下であったり、なかには無料のものも登場してきており、スマホを使って「安い・早い・簡単」という特徴を持つサービスが人気を博している。
現状もっとも多くのスタートアップ(ベンチャー企業)が競合しているのが決済業務だろう。日本は2005年頃からSuicaなどの電子マネーとおサイフケータイの普及により世界最先端のサービスが普及したが、海外ではクレジットカードの利便性を高める方向で進んでいる。
たとえば、PayPal(ペイパル)のようなクレジットカード等を事前に登録することで、さまざまな決済手段をネットでもリアルでも低額かつ容易にできるもの、複数のクレジットカードやポイントカードなどを専用のカード型デバイスで1枚に集約できるもの(コイン、プラスチック)がある。さらに、スマホに専用のデバイスを取り付けることでスマホをPOSレジ化するもの(スクエア、コイニー、ペイパルなど)、スマホのカメラを利用してスマホをPOS化するもの(フリント)、銀行の代理店として顧客にサービスを提供するもの(ムーブン)、店舗でもネット決済と同様の仕組みでレジに並ばなくても決済できるものなどもある。プラットフォーム戦略【註1】に基づく大手企業のグーグル、アップル、ラインや、米国最大の小売チェーンであるウォルマートなども決済ビジネスに参入している。
為替に関しては、スマホのアプリ、メールやチャットで個人間の送金を安価または無料で行えるものが人気だ(エムペサ、ベルモ)。海外送金もビットコインなどほぼ無料で行えるものなどがある。