1カ月当たり75円。食品(酒類及び外食を除く)と共に軽減税率の対象となった新聞の定期購読料に対する消費税8%と10%の差額だ。(朝日、毎日、読売新聞の朝夕刊セット価格の場合)
2015年12月24日に閣議決定した16年度の税制改正大綱で、「消費税率引上げに伴う低所得者への配慮として」導入される軽減税率の中に、食品と共に「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」も盛り込まれた。
これは、退潮著しい新聞業界への安倍晋三政権からの“クリスマスプレゼント”ともいえるが、同業界が国民の信頼を失う「毒まんじゅう」にもなりかねない。
新聞業界は、以前から「新聞や書籍、雑誌、電子媒体」への軽減税率適用を求めており、日本新聞協会の特設ウェブサイト(http://www.pressnet.or.jp/keigen/qa/#q2)では、「なぜ新聞に軽減税率が必要なのですか?」という問いに「ニュースや知識を得るための負担を減らすためだ。新聞界は購読料金に対して軽減税率を求めている。読者の負担を軽くすることは、活字文化の維持、普及にとって不可欠だと考えている」と説明している。
首相の動向を分単位で伝える新聞各紙の「首相動静」を見ると、首相が頻繁にマスコミ幹部と会食していることが記録されている。時の政権がマスコミとの懇親を深めようとしている姿勢が見て取れる。
軽減税率について、ある時期までは新聞各紙はさかんに「活字メディア」への適用を訴えていた。しかし、食品への適用が本格化するにつれて、そうした報道は減っていった。これは、一部で「早々に、新聞への適用も“内定”したからだろう」という臆測を呼んでいる。
しかし、今回対象に決まったのは「定期購読の新聞」のみだ。書籍や雑誌は、「成人向け雑誌など、有害図書は軽減税率に適さない」などとして、適用外となった。軽減税率そのものの是非、活字メディアを対象にすることの是非はさておき、多くの国民が「なぜ、新聞だけ?」と感じたに違いない。
新聞業界御用達のジャーナリスト・池上彰氏も、12月25日付朝日新聞朝刊の論壇時評で、「安倍政権は、新聞に軽減税率を適用することで新聞社に恩を売った。そう受け止めている読者も多いはずです」と指摘している。
新聞だけが「えこひいき」される現状
現役記者の1人は、「まさに分断統治。完全に安倍政権の戦略に乗せられた」と語る。インターネットメディアをはじめ、雑誌や書籍などからも、新聞への批判が渦巻いているが、この現状は新聞だけが「えこひいき」されているといわざるを得ない。