日本航空(JAL)の破綻以来、「日本の翼」の役割を背負ってきたANAホールディングスが大きな岐路に直面している。
中型機全盛の世界的な流れに逆らって、正札ベースで1500億円前後という巨費を投じ、エアバスの超大型旅客機A380を3機導入する計画が俎上に載せられているのだ。これまであまり力を入れてこなかったリゾート路線で橋頭堡を築くため、ハワイ路線に3機を投入するという。
とはいえ、A380の購入は、ドル箱である羽田空港の発着枠を持つスカイマークを傘下に取り込むために、破綻に直面した同社の大口債権者であるエアバスの支持を取り付けるべく浮上した措置だ。スカイマーク支配が当初の思惑ほどうまく進まないなかでの超大型機導入は、イチかバチかの大きな賭けの側面が強い。離島路線を含めて国民の空の足の多くを提供するANAの大事だけに、本件を決定するとみられる今月29日のANA取締役会の動向が大きな関心を集めそうだ。
A380は、かつて一時代を築いたボーイングの747機を彷彿させる飛行機だ。2階建ての超大型機で、レイアウト次第で500~600の座席設置が可能という。大量輸送が可能なことから、搭乗率を高めることさえできれば、高い収益を稼ぎ出せるとされている。A380の導入の成功例としては、日本と欧州間に就航させている独ルフトハンザが有名だ。
ただ、それだけ需要の大きな路線は世界的にもそれほど多くない。リゾートとなると、夏休みや大型連休以外の時期に多くの利用者を確保するのは容易ではない。結果的に、安定的に収益をあげるのが難しく、豪カンタス航空などでA380を手放す動きもあるという。創業以来、順調に成長を続けてきたスカイマークが躓いた原因のひとつは、このA3806機の購入キャンセルをめぐるエアバスへの補償問題だった。
ANAは明確に否定しているが、同社がスカイマークの再建を主導するにあたって、大口債権者であるエアバスの支持を取り付けるために避けて通れなかったのが、A380の肩代わり購入だ。ANAとエアバスの間では、現在も厳しい交渉が続いている模様だ。6機すべてではなく、3機程度で合意できる可能性があるとして、ANAの内部ではA380の投入方法が検討されているようだ。
ちなみに、羽田―福岡、羽田―札幌、羽田―沖縄など国内の大動脈で活用する案も検討されたが、滑走路の制約があり超大型のA380就航を断念したらしい。