1月に開催された政府の規制改革会議の作業部会で、バターの品不足が議題になったそうです。報道によればローソンの原材料仕入れ担当者は「乳業メーカーからのバターの供給量は昨年の8割に制約されている」と話したそうです。つまり、バターは需要の8割しか供給されておらず、品不足だというのです。
その一方で、バターの数量を実質的に管理する農畜産業振興機構(ALIC)によれば、昨年12月はスーパーでのバターの品切れがなかったそうです。一昨年の大幅なバター不足を反省して今年は6月に前倒しで輸入枠を増やしたことで、徐々に需給が改善し、12月には小売店店頭でのバター不足は解消されたという主張です。
バターは不足しているのか? それとも不足していないのか?
規制緩和を訴えかける側は不足していると主張し、政府側は不足していないと主張していて、真っ向から対立しています。
ただこの論争、経済学の簡単な知識を使うと、すぐにどちらが正しいのかがわかります。大学1年生向けのミクロ経済学の教科書に書いてある知識ですぐにわかることです。それを解説してみましょう。
供給制限により起こる2つの事象
まず背景を簡単におさらいしておきますと、現在、我が国では実質的にバターの数量管理が行われています。かなり以前から国内の生産者、つまり乳牛を育てていらっしゃる農家の方々が減少しており、現在では国内需要分のバターが国内生産だけでは賄えない状況になっています。
一方で、世界を見渡すとバター価格は下落気味で、輸入しようとすれば安値でバターを輸入することができます。しかし、国内に安値のバターが入ってくると国内の生産者がさらに打撃を受けるということで、ALICを通さなければバターは輸入できないことになっています。このようにバターは現在、国による数量管理が行われている商品なのです。
さて計画経済がうまくいって需要通りの数量管理が行われれば、国が数量管理をしていてもバターは不足しないはずですが、旧ソビエトに代表される共産主義経済下の計画経済は、過去にうまくいったことがありません。計画経済は市場経済と違ってうまく均衡点に落ち着くことは難しいので、たいがいは供給不足ないしは供給過剰に陥ります。
そしてバターの場合は、計画する側が「国内の生産者に打撃を与えない」ことを目的においている関係上、どうしても少なめに輸入数量を設定しがちになるはずです。