台湾企業・鴻海精密工業(ホンハイ)によるシャープの救済が、“ドタバタ劇”を演じている――。
2月25日、シャープは「第三者割当による新株式の発行並びに親会社、主要株主である筆頭株主及び主要株主の異動に関するお知らせ」を発表し、ホンハイにより救済が行われることを明らかにした。しかし、その日の夕方には、ホンハイ側が「シャープから新たな条件が提示された。この新たな条件を見極める必要があり、いかなる合意への調印も一時的に保留する」とのコメントを出し、交渉は暗礁へ乗り上げた。
第三者割当増資の発表までしておいて、交渉が暗礁に乗り上げるとはどのようなことなのか。通常では考えられないことだ。その内容として、シャープが将来発生するおそれのある債務約3000億円のリストを提示した、と伝えられている。
シャープの高橋興三社長は急遽、ホンハイの郭台銘会長と話し合いを持つため、台湾に向かった。その結果、ホンハイ側が債務リストについて、「大部分はこれまでの協議で明らかにされていないもの」としており、内容を精査する必要があるため交渉期限が延長されたようだ。
そもそも、ホンハイの今回の第三者割当増資における出資総額は、普通株とC種種類株をあわせて合計4890億円に上る。さらに、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行が保有している総額2000億円の優先株を鴻海が1000億円で買い取ることになる。さらに、ホンハイがシャープに対して取り決めた額を支払わない場合、デポジット(前払い金)として1000億円を没収できるという内容。銀行保有の優先株買い取り資金まで入れれば、5890億円という巨額の資金になる。
当然、ホンハイ側にすれば、シャープの財務内容については慎重にならざるを得ないだろう。
“不平等条約”の要求
加えて、第三者割当増資の内容を詳細に見ると、救済される側のシャープが、相当の経営上の条件を付けていることがわかる。たとえば、第三者割当増資の実行後におけるシャープの経営につき、力強いコミットメントが得られたとして以下内容が挙げられている。
(1)経営の独立性
当社およびその子会社の経営の独立性を維持・尊重すること
(2)一体性の維持
当社およびその子会社の各事業の一体的な運営を維持し、当社の希望する第三者との提携についても十分なサポートを提供すること
(3)従業員の雇用維持
既存の従業員の雇用維持という原則にコミットし、組織体制の最適化に関する当社の自律的判断を尊重すること