2月5日に自主廃業を宣言し私的整理を進めていた太洋社が3月15日、ついに自己破産を東京地裁に申請し、法的整理に移行した。同日には出版社や書店に「万策尽きた」とするファックスが送信され、翌週の22日には東京地裁から「破産手続開始通知書」が出版社など債権者らの元に送られた。
それによると、太洋社がどの程度の支払い能力があるかを債権者らに知らせる「財産状況報告集会」は9月20日に開催されるという。東京商工リサーチによると、破産申請時の負債は43億7635万円。その9割近くに相当する39億260万円が出版社の債権者1877社に対するものだという。
2月8日に開いた出版社・書店向け説明会で太洋社の國弘晴睦社長は、「現時点では自主廃業できると考えている。特別清算などに移行することは、現時点ではない」と法的整理をきっぱり否定。債権者にとって太洋社の支払いを期待させる「自主廃業」を強調した。それにもかかわらず、突如債権者にとって回収見込みがほぼなくなる自己破産を申請してしまったのだ。
事情に詳しい出版社営業担当者は語る。
「太洋社は2000社近くもの債権者を抱えているため、私は自主廃業できるとは思っていませんでした。それだけ多くの出版社に満額支払いを期日通り続けていけるのなら、廃業はしませんよ。2月8日の出版社向け説明会で同社は、 3月5日までは支払うと明言していました。裏返せば、それ以降は手当てできていないということです。しかも、今回自己破産を申請した理由が『3月15日の支払いができないため』でした。太洋社から出版社への支払いは、月末払い、5日払い、15日払いが多かったようです。國弘社長はもちろん、弁護士たちもそのあたりで行き詰まることを確実に予見できたはずです。自己破産は当然の選択肢だったと思います」
では、なぜ自主廃業から一転、自己破産に移ったのか。出版社が“國弘通信”と呼んでいた、太洋社が3度にわたって取引先に送付したファックスの内容と出版社の反応から、状況の推移をみていきたい。
芳林堂の自己破産
まず、2月8日の説明会から2週間が経過した2月22日の第一報である「中間決算書送付および弊社の状況ご報告」と題した文章には、説明会の席で出版社から質問があった2015年7~12月までの中間決算の概況と、帳合変更などによる書店への売掛金の回収状況、資産売却の見通しなどが綴られているが、そこには次のような驚くべき内容が記されていた。