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垣田達哉「もうダマされない」

日清カップヌードルファンたちが「静かに」離れ始めている…中止CMへの嫌悪感

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
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日清カップヌードルファンたちが「静かに」離れ始めている…中止CMへの嫌悪感の画像1日清カップヌードルの看板(「Wikipedia」より/トトト)

 消費者はわがままで、あまのじゃくである。「同じような不祥事を起こしても、批判される企業もあれば、それほど批判されない企業もある。それは不公平じゃないか」という声も聞くが、消費者はそんなものだ。消費行動は理屈ではない。好き嫌いだ。誰がなんと言おうと「好きなものは好き、嫌いなものは嫌い」なのだ。

「期待していた人ほど裏切られ感が強い。好きだった企業に裏切られるのが一番嫌だ。好きでもない企業、特別関心もない企業が何をやろうとどうでもよい」というのが消費者の心理だ。だから、同じようなものを販売・提供しても、売れる企業もあれば売れない企業もある。

日清カップヌードルファンたちが「静かに」離れ始めている…中止CMへの嫌悪感の画像2『一冊で分かる!食品表示』(垣田達哉/商業界)

 世の中気に入らないことばかりだが、その不平不満を言うところがない。せめて「自分のお金を払って物を買う時ぐらい、好き勝手にしたい。好きなようにしたい」というのが、多くの消費者だ。「身銭を払う時ぐらい多少わがままなことを言ってもいいじゃない」と自己分析している消費者は少ないが、売る側の企業からするとそう見えてしまう。だから商売は難しい。でも、だからこそ商売は面白いのだ。

 筆者は事業者向けの講演で言うことがある。それは、「食は女性に嫌われたら終わりだ」ということだ。今では、食を選ぶ権限は多くの場合女性が握っている。女性は、一度嫌いになったら一生嫌いだ。「女性に嫌われたら、振り向いてくれることは、まずない」と覚悟しなければいけない。

日清CM中止騒動

 日清食品の「カップヌードル」のテレビCM放送が、開始から1週間ほどで中止になったことが話題になっている。女性に嫌われないという点では、今回のCMは女性には「好き嫌いが顕著に表れる」内容だ。このCMに好感を持つ女性よりも、嫌い(不愉快)と思う女性のほうが圧倒的に多いかもしれない。

 企業でも芸能界でも、大きくなるまでは「俺を好きな奴だけついてこい、嫌いな奴はついてこなくていい」というスタンスでも構わないだろう。しかし、大きくなるとそれは通用しなくなる。芸能界の一部には、有名になっても嫌われ役を演じる人もいるが、多くの芸能人は有名になると丸くなる。それは、いわゆるファンだけを相手にするのではなく、不特定多数の消費者を相手にしなければならなくなるからだ。

 日清食品ほどの企業になれば、ファンだけでは企業は成り立たない。浮動票をいかにつかむか、そして「つかんだ浮動票はできるだけ逃がさない」ことが必須である。

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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