今年1月、寿司チェーン・すしざんまいを運営する喜代村の木村清社長が「アフリカのソマリアで、海賊たちを漁師にして海賊被害をゼロにした」という話題がインターネット上を駆けめぐった。
木村社長は自らCMに出演しているため、何かと注目されやすい人物ではある。当初、ネット上では「さすが!」「かっこいい!」「海賊王だ!」と大絶賛する声が相次いだ。しかし、数日後にはノンフィクション作家の高野秀行氏が「そんなわけがない」とブログで一蹴、「事実はどっちだ?」とネット上で混乱する人が続出した。
ソマリア沖は海賊が多く出没する危険な海域だが、キハダマグロの良い漁場でもあった。そこで、木村社長が海賊たちに会いに行って話をした。彼らに漁師になるように説得し、船4隻を与え、マグロ漁の技術を教え、マグロを獲った後に入れておく冷凍倉庫も使えるようにしたという。
また、インド洋まぐろ類委員会(IOTC)への加盟をソマリア政府に働きかけ、販売ルートを確保。こうして、2012年頃から同海域での海賊被害はゼロになり、木村社長はジブチ政府から勲章までもらった――これが、木村社長が自ら語った逸話である。
もともと、木村社長は太っ腹な人物で有名だが、その豪快さはどこからくるのだろうか。“マグロ大王”とも呼ばれる木村社長の伝説やエピソードの数々を見てみよう。
13年の初競りで、大間産の本マグロを1億5540万円で落札!
本人は、「どんどん値が上がっていって、競りを止めるわけにもいかなかった」と語っているが、この初競りは、11年3月の東日本大震災以降止まっていた青森県大間町産のマグロ漁再開を祝う意味もあったといわれている。
最後まで競り合っていたライバルは香港資本で、「ようやく初競りに出た大間産のマグロ。記念すべき初競りで、外国資本に持っていかれるわけにはいかなかった」という男の意地が垣間見える。
落札されたマグロは、換算すると1貫4~5万円はするはずだが、実際には最高級の大トロでも1貫418円だったという。まさに太っ腹だ。
移転する新市場に「年間420万人来場」の超目玉施設建設を計画!
すしざんまいは、築地から豊洲に移転する新市場に大型観光施設「千客万来」を建設する予定だった。
まず、運営元の喜代村が飲食店や専門店街、温浴施設などを備えた床面積約1万7000平方メートルを整備。一方、大和ハウス工業が伝統工芸の体験施設、温浴などを備えた施設を整備する計画があった。それに伴い、都から土地を年1億3672万円、30年間の定期借地契約で借りる予定だったのだ。
しかし、両社は東京都と条件面が折り合わず、基本協定書を締結していなかったため、施設建設の計画は白紙に。「年間420万人来場」の夢は泡と消えた。魚介類や飲食店経営に精通し、豪快な木村社長の手によるものでなければ、「千客万来」の建設・運営は無理な話だろう。