苛酷さ増す介護現場、一気に改善する技術が登場…要介護者の転倒半減、作業時間激減
和歌山県というと、どんな印象を持つだろうか。近畿地方、しかも大阪の隣にありながらこれといった印象のない、九州でいうところの佐賀、関東でいうところの栃木のようなマイナー県のひとつではなかろうか。中学校の社会の時間に梅の生産量は日本一と習いはするものの、梅に興味がない中学生にとっては今ひとつピンとこない。
我々お父さん世代にとっては、高校野球で有名な智弁和歌山高校(もう少し上の世代では尾藤公監督で有名な箕島高校)があるため、一部の高校野球ファンには野球のメッカとして知られているかもしれない。
今年は和歌山(紀州藩)出身で暴れん坊将軍のモデルにもなった8代将軍徳川吉宗の将軍就任300年ということで、地元では盛り上がりを見せているが、和歌山以外でそれを知る人も少ないし、2015年には世界遺産にも指定されている高野山(こうやさん)の開創1200年記念イベントで一瞬賑わいを見せたが、その効果も今ひとつ。
そんなマイナー県の雄・和歌山であるが、今、和歌山発のある技術が深刻な社会問題となっている介護問題解決の“救世主”として注目を浴びている。
その技術というのが、和歌山市に本社を置くノーリツプレシジョン社【注1】が開発した、要介護者の見守りシステム「ネオスケア」だ。15年には、経済産業省ロボット介護機器開発・導入促進事業のなかで、優秀機器認定を受けている。また、5月26~27日に三重県伊勢市で開催中の「G7伊勢志摩サミット2016」でも展示されている。
介護現場の過酷な労働環境
昨今、過酷な介護現場のニュースを頻繁に耳にするが、介護職員の負担は想像以上に深刻だ。自分で起き上がろうとして転倒する、あるいは寝返りを打った際にベッドから落ちるなどは、高齢者にとっては致命傷になりかねない。そのため、職員はこまめに見回りをするなど常にきめ細やかな対応が求められ、神経は磨り減るばかりだ。
そんな過酷な労働環境が、結果として介護職員の採用を困難にし、さらには離職率を高める原因のひとつとなっている。今後ますます高齢化が進み、介護の必要な高齢者が増加の一途をたどるなかで、介護職員の人材不足は年々深刻化している。
政府は将来の労働力不足の対策として、中長期的に外国人労働者の受け入れも検討しているが、高齢者に直接接する介護現場における外国人労働者の活用の余地は当面は限定的と考えられている。