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星野達也『文系お父さんのための、テクノロジー講座』

苛酷さ増す介護現場、一気に改善する技術が登場…要介護者の転倒半減、作業時間激減

文=星野達也/ナインシグマ・ジャパン取締役 ヴァイスプレジデント

 つまり、介護現場における問題は年々深刻化しているにもかかわらず、決定的な解決策が見いだされていないのだ。厚生労働省は、わずか9年後の2025年には国内で介護職員の数が40万人不足すると発表している。

リアルタイムで介護現場の見える化

 そんななか、このネオスケアは画期的な技術で、介護現場の改善に大きく貢献できると期待されている。

 画期的な技術とは、独自のセンシングテクノロジーにより24時間要介護者を“見守る”技術である。複数のセンシング技術を組み合わせることで、夜間でも正確に現場を“見える化”することができる。

 カメラが監視しているようにも受け取られ、プライバシーへの配慮が気になるが、そこにもユニークさがある。

 撮るのはシルエット画像のためプライバシーは守られるし、ベッドからの起き上がりなど、転倒などにつながる可能性のある動きをいち早く検知し、それを素早く介護職員の携帯電話に知らせることができる。職員は、連絡を受けてから現場に移動すればよい。

 精度も高く、これまでの機器のような誤検知が非常に少ないのもこの技術の強みだ。

 つまり、プライバシーを保護しながら、リアルタイムで介護現場の見える化を可能にし、危険を予測して職員に通知できる画期的な技術なのだ。3カ月かけて実施した実証実験では、要介護者の転倒回数は半減し、介護スタッフの作業時間は30%低減したというから驚きだ。

 もちろん介護施設だけでなく、個人宅に設置することも可能だ。また、撮影の記録がとれるので虐待対策にもなるし、看取り介護(終末期医療)にも有効だ。この技術は、今の介護現場の課題を一気に解決する可能性を秘めているのだ。

 優れたテクノロジーを導入することで介護職員の作業時間を短縮し、トータルコストの低減ができれば、施設にとってのメリットは大きい。これがうまくいけば、日本の労働者人口減少問題を解決するモデルケースのひとつとして、他の業界への波及効果も期待できる。

 安倍政権はしきりに地方活性化をうたっているが、モノづくりの国・日本には、全国各地に元気なモノづくり企業が存在し、高度な技術を保有している。和歌山という地から生まれたネオスケアは、地方企業の底力を見せつけたひとつの成功事例としても、今後注目されることになるだろう。

星野達也/ノーリツプレシジョン株式会社 代表取締役社長、ナインシグマ・ジャパン顧問

星野達也/ノーリツプレシジョン株式会社 代表取締役社長、ナインシグマ・ジャパン顧問

東京大学工学部地球システム工学科・同大学院修了。ルレオ工科大学(スウェーデン)客員研究員。1999年に三井金属鉱業入社、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、ナインシグマ・ジャパン(現ナインシグマ・アジアパシフィック)を共同創業。研究開発費100億円以上の企業を対象に、150社とプロジェクトを実施し、オープン・イノベーションのビジネスモデルを国内で展開する。2016年ノーリツプレシジョン株式会社入社、2017年同社 代表取締役社長に就任。

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