いまや2兆円に迫るともいわれる健康食品市場。「健康」に対する消費者のニーズは高く、いま最も勢いのある業界のひとつかもしれない。小投資、少人数で手軽に始められるとあって、ビジネスとしても“うま味”がある。ただし、市場に参入するには健康増進法、薬事法、食品衛生法、特定商取引法、景品表示法、個人情報保護法などの法律への正しい理解が必要だ。
だが、健康の保持増進の効果などについて虚偽・誇大な広告や、医薬品的な効能・効果を謳った表示をするなど、悪質販売があとを絶たない。以下は今年3月から4月にかけて、日本経済新聞に掲載されたその具体例だ。
「消費者庁は31日、『認知症やがんを予防する』と宣伝して食用ココナツオイルを販売したのは根拠が認められず、景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして、食品関連会社『ココナッツジャパン』(東京)に再発防止を求める措置命令を出した」(2016年4月1日)
「サプリメントを飲むだけで痩せられるとの広告には根拠がなく、景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして、消費者庁は16日までに、健康食品販売のアサヒ食品(埼玉県川口市)に再発防止などを求める措置命令を出した」(3月16日)
「『どんな病気も良くなる』などとウソの説明をして購入を持ちかけたのは特定商取引法違反(不実告知など)に当たるとして、消費者庁は10日までに、健康食品販売会社『ナチュラリープラス』(東京・港)に同日から9カ月間、新規勧誘など一部業務の停止を命じた」(3月10日)
「ライオンが販売する特定保健用食品(トクホ)で、消費者を著しく誤認させる広告表示があったとして、消費者庁は1日、健康増進法(誇大表示禁止)違反で再発防止などの措置を勧告した」(3月2日)
ライオンのケースは、2015年9月15日~11月27日、全国紙や地方紙の広告に「臨床試験で実証済み!これだけ違う、驚きの『血圧低下作用』」などと記載。あたかも同商品を飲めば血圧を下げる効果があるかのように宣伝した。この件に関しては、広告担当者の関連法規への理解が不十分で、新商品をどうアピールするかというなかで踏み込んだ表現を使用したというのが真実のようだ。他社より魅力的な商品として訴えようと誇大表示した。その裏を返せば、競争がいかに激しい業界かが理解できるだろう。