悪質販売があとを絶たない状況は今も昔も変わらない。だから、「健康食品=怪しい」というイメージを業界に植え付けていることも否定できない。業界関係者は、「表示された原材料が含まれていない健康食品も少なくありません。それでも売れるのは、高齢者を中心に健康志向の消費者が多いからにほかなりません」と話す。
新制度の定着には時間がかかる
健康食品に関しては、「おなかの調子を整える」などと効能を表示できる特定保健用食品、いわゆるトクホがある。科学的根拠に基づき国が認定する食品だ。ただ、許可を得るのに費用や時間がかかりハードルが高いため、多くの業者が認定を受けずに根拠不明な健康食品を販売しているのが実情なのである。
こうしたなかで、15年4月から「機能性表示食品」制度が始まった。健康に与える効果の科学的根拠を示す論文や表示内容を消費者庁に届け出れば、60日後には販売できる新制度だ。これによって、食品表示制度は現在、国の審査や許可が必要なトクホと、国の許可は不要な栄養機能食品、そして機能性表示食品の3制度となっている。栄養機能食品は、「カルシウムは骨や歯の形成に必要な栄養素です」などと、特定の栄養素の説明に限られる。
新制度の対象はサプリメントや加工食品のほか、生鮮食品など食品全般。表示できる効能は健康の増進や維持の範囲に限られている。成分を表示した上で、たとえば、「肝臓の働きを助けます」「目と鼻の調子を整えます」などといった具合だ。事業者は健康被害の情報収集体制を構築する必要もあり、販売後に問題があれば食品の回収や罰則を科せられることもある。新制度がスタートしたことで、従来は具体的な健康効果を表示しにくかった既存商品拡販の弾みとなっているのは確かだろう。
しかし、新制度にしても届け出をしなければ制度の対象にならず、制度を無視する悪質業者はしばれないのが実情なのだ。消費者側からは、「トクホとの違いがわからない」といった声も上がるなど、新制度の定着にはまだまだ時間がかかりそうだ。
含有成分などの情報公開を
健康食品の不当表示があまりにも多い現状を憂慮してのことだろう。4月中旬、内閣府の消費者委員会は健康増進法改正の検討を河野太郎消費者行政担当相と消費者庁に求める建議をした。「健康食品やトクホの効果を誇大に表現した広告や表示があり、消費者を惑わせている」との理由からだ。