創薬ベンチャーのアキュセラ・インク(東証マザーズ上場)とその大株主であるSBIホールディングス(HD)、さらにはSBIHD社長の北尾吉孝氏の情報管理のあり方が問われている。
アキュセラ株は加齢黄斑変性という難治性の眼病の治療薬開発の期待を背景に、今年5月27日には7700円という上場来高値を付けていた。昨年8月には600円に満たない株価だったのが急騰。ところが臨床試験で有効性が認められなかったことから、暴落。株価はその後1000円そこそこに売り込まれている。実に8割以上の暴落である。
この急騰、急落の過程でいくつかの問題点が生じている。アキュセラが臨床試験の結果を公表したのは、5月26日の朝7時30分。一方、株価は前日の25日に最高値を付けた後、一転して制限値幅いっぱいの1000円安に売り込まれていた。市場では情報の漏洩があったのではないかとの見方が広がり、インサイダー取引も疑われる格好になった。
SBIHDは5月30日に「当社グループおよび北尾社長はアキュセラ株を一切売却していない」とのコメントを出している。実際の売買については、日本取引所グループが売買内容の調査に入っている模様。試験結果は当初6月中の公表予定だった。
コメントを出さざるを得ないほどに疑惑が広がった背景に、北尾氏のアキュセラに対する思い入れの深さがあるというのが、多くの市場関係者の見方となっている。SBIHDはバイオベンチャーへの投資に積極的だが、アキュセラを創業当初から支援している。
アキュセラ創業者の窪田良社長は北尾氏と同じ慶應義塾大学の出身。同社は2014年に新任の取締役らがクーデターを起こし、窪田氏は経営権を奪われそうになったことがある。これを阻止したのが北尾氏で、北尾氏は同社の取締役になっていたこともある(昨年6月に退任)。
広がった「開発順調」との観測
株価が動意づいたのは今年になってからで、そこで注目されたのは北尾氏名義のツイッターだ。株価が急騰する過程で、一時的な調整を見せた場面では「もう下がる 思うこころの 浅はかさ」(4月12日)、「#アキュセラが連続ストップ高。眼疾患の加齢黄斑変性に対する治療薬『エミクススタト』を開発しており現在、臨床第2b/3相試験の段階にある。株価は4000円台のもみ合いを一気に上放れておりバイオベンチャー株の新たな先導役となりつつある」(5月23日)などと投稿している。売買誘引目的のコメントといわれても仕方のない内容にも見える。