ラブホテルやレジャーホテルといったカップル向けホテルの特徴の一つが、フロントスタッフと顔を合わさずに支払いができるところだ。
これは、客からすれば、ラブホテルに入ろうとしている姿をジロジロ見られることなく入室できるという大きなメリットがある。自動精算システムは気分を盛り上げるためにも、必要不可欠なものなのだ。
■従業員による売上横領防止策として生まれたシステム
ラブホテルの自動精算機において国内で80%のシェアを誇っている会社を知っているだろうか。有線音楽最大手企業USENの完全子会社、株式会社アルメックスである。
アルメックス代表取締役社長である馬淵将平氏が執筆した『テクノホスピタリティを世界へ―――断トツナンバーワンへの挑戦』(ダイヤモンド社刊)によれば、もともと自動精算機は、人件費の削減と「従業員による売り上げの横領」の防止策としてラブホテルの間で広がったという。
それから30年を経て、技術革新が進むなかで、自動精算機は進化を遂げてきた。カップル向けホテルだけでなく、ビジネスホテルやシティホテルでもこのシステムが席巻しはじめており、さらには東南アジアを中心に世界にも進出しはじめている。
■破綻直前のUSENに召喚された、外銀出身のエリートCFO
そんなアルメックスがUSENによって買収され、その傘下に入り完全子会社化となったのは2006年11月のことだった。
当時ライブドアの社長だった堀江貴文氏らヒルズ族の兄貴分として、一時代を築いたカリスマ経営者、宇野康秀氏が社長であることでも有名なUSENだが、一時は深刻な経営危機に陥っていた。
そうしたUSENの窮状を救うために、世界最大手投資銀行ゴールドマンサックスからCFOとして派遣されたのが、アルメックスの現社長、馬淵将平氏だ。
CFOとして何としてでもUSENを存続させなければならないという強い責任と思いの下、馬淵氏は、破綻直前のUSENに対してリストラや赤字事業の撤退など、徹底した経営合理化を行なった。USENの経営責任者であった宇野氏をしてGHQだとまで言わしめた凄腕CFOの馬淵氏だったが、アルメックスを手放すという選択肢はなかったという。
実際のところ、当時から高い市場シェアをもち収益をあげていたアルメックス内部では、破綻寸前のUSENと生死をともにすることに不平不満の声も当然ながら上がっていた。
それでも馬淵氏がアルメックスを売却しなかったのは、アルメックスの安定性や底堅いビジネスモデルといった魅力に加えて、自動精算機システムというビジネスに一層の成功が見込めたからだ。多角化経営を進め、経営が傾いていたUSENにとって、彼らはこの上ないパートナーだったのだ。
■テクノロジーでホスピタリティを実現
今年で創業50周年を迎えたアルメックスは、現在医療機関でも自動精算のシステムの提供を行っており、テクノロジーを通した究極のホスピタリティの実現に向けて邁進している。
新たなテクノロジーのニーズをどう発掘し、どのように普及するか。そして超有名企業の傘下に入った中小企業は、『テクノホスピタリティを世界へ』に書かれている業界NO.1中小企業の手法は、あらゆるビジネス現場において大きなヒントになるはずだ。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。