NTTドコモは6月16日、前代表取締役社長の加藤薫氏に代わり、前副社長の吉澤和弘氏が正式に社長に就任した。さまざまな苦難がありながらも、最後の1年で増収増益を達成した加藤氏から吉澤氏の体制に変わることで、ドコモの戦略はどのように変わるのだろうか。
副社長だった吉澤氏が社長に就任
去る5月13日、ドコモは当時社長であった加藤氏が退任し、副社長であった吉澤氏が新たに社長に就任することを発表。その後6月16日の株主総会でこの人事が承認されたことを受け、吉澤氏が正式にドコモの社長に就任することとなった。
ドコモは4年毎に社長を交代することが慣例となっており、これまでも4年毎に体制が入れ替わっていた。加藤氏が就任したのも、その前に社長を務めていた山田隆持氏が退任した2012年。それから4年が経過したことを受け、従来通りの人事が打ち出されたといえるだろう。
新たに就任する吉澤氏は、ドコモが設立した当初からNTTより転籍した初期メンバーの1人であり、加藤氏の部下として同社最初の携帯電話「ショルダーホン」の開発に携わるなど、加藤氏との関係が深い人物である。その後法人営業や経営企画などを経て、加藤氏の体制では副社長に就任していた。
その吉澤氏が新たに社長に就任することで、ドコモはどのように変わるのかというのが、多くの人が最も気になるポイントであろう。その吉澤氏の体制における戦略を見る上で重要なポイントとなるのは、これまでの加藤氏体制によるドコモの取り組みである。
波乱が多かった加藤氏の体制だが、回復の道筋を示す
加藤氏が山田氏からバトンを引き継いだ当初、ドコモは人気の米アップル製iPhoneを取り扱っていなかったことから、ユーザーの不満が高まり他社への流出が拡大するなど、足元は決して万全とはいえない状況であった。業績が落ち込みつつある状況下で、加藤体制下の同社は長い間、苦戦を強いられることとなる。
加藤体制で最初に打ち出されインパクトを与えたのは、特定の2機種を優遇販売する「ツートップ」戦略であろう。この施策は、iPhone対抗としては大きな効果を上げることはできなかったが、これを機に従来条件が合わず避けていたiPhoneの投入へ積極的に動くなど、短期間のうちに方針を大きく変えたことは、加藤体制のスピードの速さを示したといえる。