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手島直樹「マーケット・インテリジェンスを磨く」

日本企業が手を染める「危険な財務戦略」…見せかけの財務改善が企業を滅ぼす、リキャップCBの罠

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「Thinkstock」より
 本連載では、これまでROEをテーマとして取り上げてきましたが、今回はROEに関連して最近よく目にする「リキャップCB」について考えていきます。


 リキャップCB は、2008年にヤマダ電機が実施したのが日本初。最近では関西ペイントや富士機械工業が実施しています。その発行額は2014年と15年に約4000億円となっており、13年の約1000億円の4倍ほどに拡大しています。また、日本取引所グループが実施する企業価値向上表彰で15年度の優秀賞に選ばれた日本ハムとカシオ計算機(大賞はピジョン)は、どちらもリキャップCBを実施しており、近年では財務戦略の一つとして確立されつつあります。こうしたリキャップCBの拡大は良いことなのか、悪いことなのか。それが今回のテーマとなります。

リキャップCBのメカニズム


『ROEが奪う競争力 ―「ファイナンス理論」の誤解が経営を壊す』(手島直樹/日本経済新聞出版社)
 リキャップCBの効果として一番重要なのは、財務レバレッジを簡単に引き上げることができることです。これが何を意味するのかというと、結論からいえば、ROE改善の即効薬ということです。

 本連載の第1回目に、ROEを以下のように3つの要因に分解するデュポン・システムについて紹介しました。

・ROE=売上高純利益率(当期純利益÷売上高)×総資産回転率(売上高÷総資産)×財務レバレッジ(総資産÷自己資本)

 デュポン・システムによれば、財務レバレッジが高まれば、売上高純利益率や総資産回転率に変化がなくてもROEが改善することになります。まさにそれこそリキャップCBの狙いです。

 では、どのように自己資本を圧縮するのか。自己資本を圧縮するのに効果的なのは、これまた最近話題になることの多い自社株買いです。一般的には余剰現金を原資に自社株買いを行うことが多いですが、リキャップCBではCB(転換社債)を発行して資金調達をし、その資金を原資に自社株買いを行います。



 上図が示すように、結果として資本の一部が転換社債に置き換わります。つまり、資本が圧縮されることになり、当期純利益が不変であればROEは改善されることになります。あたかもマジックのようです。ROEが5%に達しなければ、議決権行使助言会社に取締役選任議案への反対を推奨されてしまう世の中になってしまったことを考えれば、リキャップCBが重宝されるのは無理もありません。