「会社がおかしくならないようにしてからバトンタッチするのが役目と考えている」――
エアバッグ問題で揺れるタカタの高田重久代表取締役会長兼社長は、6月28日に都内で開いた定時株主総会で進退を問われて、一連の問題が落ち着いた後に辞任する意向を示した。欠陥エアバッグの原因については一部で解明が進み、自動車メーカー各社はリコール費用の分担について交渉を本格化させる見通し。一方でタカタは経営再建に向けてスポンサー企業探しを本格化している。タカタは生き残りに向けて、今夏にも正念場を迎える。
株主総会で高田氏は、エアバッグ問題について株主に対して謝罪したものの、株主からは説明責任を果たしていないとして高田氏の経営責任を問う厳しい質問が相次いで投げかけられた。これに対して経営側は、自動車各社とのリコール費用の分担、経営責任やスポンサー探しについて外部の外部専門家委員会に委ねていることを説明するにとどまり、出席した株主らの不満は高まるばかりだった。
タカタ製欠陥エアバッグを原因とするリコール台数は、雪だるま式に膨らみ続けている。タカタは米国運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)と今年5月、乾燥剤の入っていない「硝酸アンモニウム」の火薬を使っているインフレーターのエアバッグをすべてリコールすることで合意したためだ。
衝突事故などでエアバッグが展開する際、インフレーターが異常破裂して金属片が飛散、乗員が死傷する。リコール問題が長引いているのは、その異常破裂の原因を特定できていないからだ。原因が特定されていないことから、自動車メーカー各社は予防的措置として、リスクの高いエアバッグを搭載している車両を対象に自主的にリコールしている。原因が特定された段階で、タカタにリコール費用の一部を求償する予定だ。
NHTSAは、タカタ製インフレーターの不具合の原因について、硝酸アンモニウムが高い湿度や温度変化にさらされると劣化し、火薬の爆発力が増すとの調査結果をまとめた。タカタ製エアバッグの採用率が高いホンダの調査でも、同様の調査結果になっているとされている。
一方、タカタは乾燥剤なしのインフレーターの追加リコールについて「社内外の試験でインフレーター容器の破損は確認されておらず、具体的な危険性をうかがわせるデータや技術的分析結果が外部研究機関などから示されているわけではない」としている。