4月の熊本地震発生から約2カ月が経った6月10日、蔦屋書店熊本三年坂がリニューアルオープンした。復興のシンボルたらんとする同店の華々しいリニューアルの陰で、熊本市の繁華街でアーケード商店街の上通と下通には、いまだシャッターが閉まったままの店がある。すでに移転した店、廃業した店もあるというなか、金龍堂まるぶん店、長崎書店、橙書店の3書店を訪れた。震災からの復興をめぐり、書店は何をして、何を見てきたのか。それぞれの現状をレポートする。
【金龍堂まるぶん店】
「一日も早い再開を願っています」「早くカッパさんに会えますように」「スタッフ皆さんの笑顔に早く会えますように」――。まるで七夕の短冊に掲げた願いのような、多くの読者の思いが、閉じられたシャッターの張り紙に寄せ書きのように綴られている。
上通にある「金龍堂まるぶん店」(売場290坪)は、今もシャッターが閉まったままだ。4月23日付で「お客様へ」と書かれた張り紙には、地震の影響で休業する旨を伝えるとともに、「店のシンボル“カッパ像”は地震の揺れに耐え、今も健在です。いつか必ず、皆さまの前に元気なカッパ像をお見せしますね!」と再開を約束するメッセージも添えていた。
「まるぶん」の愛称で親しまれる同店は4月16日に発生した熊本地震の本震の影響で、同店が営業するビルの屋上に設置された貯水タンクが倒壊、その影響で1階売場の雑誌など数百冊もの本が水に濡れた。さらに、ビルの配電盤が故障し電気は1カ月ほど止まり、建屋壁面のあちこちに亀裂が入り、1階奥の文庫・新書売場のレジ付近の天井板の一部が剥がれるなどの被害に見舞われた。その日を境に、店頭入口に鎮座する3体のカッパ像が人目に触れることはなかった。
4月14日の前震では、1~2階の本棚から約半分の書籍や雑誌が床に落下した程度の被害だった。しかし、本震による被害、とくに水害に頭を悩まされたという。
貯水タンクの倒壊で屋上の床(1階天井)や配管が破損したため、雨が降ればその箇所から水が漏れてくるようになった。1階の一部の床は水たまりになり、その天井には染みとカビが広がり、1カ月後には1枚の天井板が腐敗して抜け落ちてしまった。水に濡れてしまった多くの本を乾かし、返品不能品として泣く泣く段ボールに入れた。