先日、弁護士の大渕愛子氏が「依頼人から不当に報酬を受け取った」として、東京弁護士会から業務停止1カ月の懲戒処分を受けたことが明らかになった。8月2日に記者会見を開いた大渕氏は、「依頼人の方に心よりお詫び申し上げたい。私の認識不足でした」と謝罪。大渕氏はバラエティ番組『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)などに出演しているが、今後はタレント活動も含めて業務を停止するという。
事の発端は、2010年10月。大渕氏は、依頼人の女性から離婚した元夫への養育費請求を着手金17万8500円、月額顧問料2万1000円で受任、依頼人は並行して、弁護士費用の立て替えなどを行っている機関「法テラス」の代理援助制度を利用した。そのため、法テラスの規定により、弁護士は依頼人から直接報酬を受け取ることができなくなると同時に、法テラスが定めた着手金10万5000円と経費2万円しか受け取ることができなくなる。
しかし、大渕氏は差額を依頼人から受け取っていたという。女性は11年6月に返金を求めたが大渕氏は拒否、同年10月に弁護士会などの説得によって返金したという。
これについて、東京弁護士会が「弁護士の品位を失う非行」と厳しい姿勢を見せる一方、弁護士で大阪府知事や大阪市長を務めた橋下徹氏は「処分が重いし、不当。異議申し立てをすべき」と主張している。実際、大渕氏への処分は適正なのだろうか。以下、弁護士のAさんが問題の背景について解説する。
大渕氏は弁護士会の重鎮を敵に回した?
大渕氏への「業務停止1カ月の懲戒処分」ですが、弁護士会の重鎮の誰かの不興を買い、敵に回した結果ではないでしょうか。これまでの“相場”と比較しても重すぎますし、ほかの「なんらかの力」が暗躍した可能性も否定できません。まず、弁護士の懲戒処分制度について説明します。
最近、「弁護士の懲戒ネタ」のニュースが増えていますが、これまでは「依頼人のカネを横領した」ことを理由とする懲戒処分がほとんどでした。しかし、最近は「電車内での痴漢」「わいせつ」「盗撮」「児童買春」といった、実に「お恥ずかしい」理由での懲戒処分が増えています。
「スカートの中を盗撮したことを理由とする戒告処分」「未成年を買春したことを理由とする業務停止3カ月の処分」「弁護士会の職員に電話でセクハラをしたことを理由とする業務停止1カ月の処分」「依頼人を事務所に呼び出して性交渉を行ったことを理由とする退会命令」など、キリがありません。
弁護士が増加傾向にある中、そもそも素質も資質もないような連中にも弁護士バッジを与えるから、「弁護士の不祥事」は増える一方となるわけです。