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永濱利廣「“バイアスを排除した”経済の見方」

中・低所得層のさらなる低所得化が必ず加速する理由…世界の格差縮小、国内の格差拡大

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「Thinkstock」より

 年明け以降、米国の製造業景気指標は、先進国のなかでもっとも改善傾向にある。代表的な指標であるISM製造業景況指数は、2015年12月の48.0から16年6月には好不調の分かれ目となる50を超える53.2まで上昇し、米国製造業の景気は昨年末をボトムに回復傾向にある。

 これは、年明け以降の原油価格の反転でシェール関連企業の景況感が改善したことが一因であろう。しかし、それ以上に世界経済の先行き不透明感に伴う米利上げ観測の後退でドル安が進み、輸出競争力の高まりを背景に製造業の景況感が回復し始めたこと、つまり為替要因による面が大きい。

 中国の製造業PMIも、全国人民代表大会(全人代=国会に相当)を契機とした景気刺激策の加速とそれまでの人民元安で、今年2月を底に急速に改善している。さらに欧州でも、ECB(欧州中央銀行)が15年1月から量的緩和に踏み切りユーロ安が進んだことから、企業の輸出競争力の高まりを追い風に、ユーロ圏の製造業PMIが改善傾向にある。

 対照的なのは日本だ。世界経済の不透明感に伴う投資家のリスク回避姿勢から円高が進んだ結果、日本企業の景況感は急激に悪化している。

 日本の製造業PMIは16年5月に47.7とアベノミクス初期の13年1月の水準まで落ち込み、翌6月には48.8とやや上昇に転じたものの、依然として好不調の分岐点である50を下回っている。これは、4月の熊本地震に伴うサプライチェーン(供給網)一時停止の影響だけでなく、政府の為替介入や日銀の追加緩和観測の低下を背景に、円高による企業業績への懸念が大きく高まったことによるものであり、日本だけが円高に苦しめられる構図となっている。

先進国の長期停滞論


 GDP(国内総生産)や鉱工業生産指数といった重要な経済統計の先行指標として注目されるPMIと為替の連動性の高まりは、実体経済に及ぼす為替の影響度が従来以上に強まっていることを示す。こうした構図を考えるひとつの拠り所は、長期停滞論である。これは米国のサマーズ元財務長官が提示した「先進国の長期停滞論」に基づいたものだ。

 サマーズ氏が14年に執筆したコラムによれば、長期停滞とは重大な経済危機や金融危機が引き起こした深刻な需要不足が資本や労働投入を激減させ、潜在GDP(経済全体の供給力)を大きく引き下げるとされる。このため、危機後のGDPは危機がなかった場合の潜在GDPに比べると、水準も成長率も低いままにとどまってしまう。