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筈井利人「一刀両断エコノミクス」

ノーベル経済学賞は「ノーベル賞」ではなかった!人類に貢献せず、経済的混乱の要因に

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ノーベル賞のメダル(「Wikipedia」より/Awalin)

 ノーベル賞の季節がやってきた。ノーベル賞といえば、いうまでもなく科学の世界で最高の栄誉とされ、受賞者はその道で最高の権威として一般の人々からも称賛を集める。

 ところが全部で6部門あるノーベル賞の中で、「これは本当はノーベル賞ではない」といわれる賞があるのをご存じだろうか。おまけにその賞の対象は、文学賞や平和賞は別として、「科学とは呼べない」という批判まで聞かれるのだ。

 それはノーベル経済学賞である。「ノーベル賞ではない」という意見は、別にいいがかりではなく、少なくとも形式的には完全に正しい。一番わかりやすいのは正式名称だ。他の賞の正式名称が「ノーベル物理学賞」「ノーベル化学賞」などであるのに対し、経済学賞は「アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞」という。

 スウェーデン国立銀行とは、スウェーデンの中央銀行で、日本でいえば日本銀行にあたる。他の5部門がダイナマイトの発明者アルフレッド・ノーベルの遺言に基づいて創設され、1901年に始まったのに対し、経済学賞のスタートは20世紀も後半の1968年。スウェーデン国立銀行が設立300周年を記念してノーベル財団に働きかけ、創設された。だからその名が賞に付けられているわけだ。

 経済学賞は、賞金の出所も他の部門とは違う。他の部門はノーベルの遺産をノーベル財団が運用して得た利益を充てるのに対し、経済学賞はスウェーデン国立銀行が拠出している。

 経済学賞の受賞者選考は、物理学賞、化学賞と同じく、スウェーデン王立科学アカデミーが行う。ノーベルの遺志にない賞の新設に同アカデミーは当初あまり乗り気ではなく、ノーベルの子孫は今でも賛成していないといわれる。

「偉大な貢献」をしたのか?

 形式もさることながら、より重要な問題は内容である。そもそも経済学とは、物理学や化学、生理学・医学と肩を並べるにふさわしい「科学」といえるのだろうか。

 ノーベルは遺言書で、賞の対象者を「人類のために最も偉大な貢献をした人」としている。物理学をはじめとする自然科学であれば、ノーベルのいう「偉大な貢献」は具体的にイメージしやすい。

 たとえば第1回物理学賞を受賞したレントゲンはX線を発見し、医療や工業の発展に大きく貢献したし、生理学・医学賞を受けたワトソンらはDNAの二重らせん構造を解明し、分子生物学の基礎を築いた。物理学賞を共同受賞した3人の日本人研究者が発明した青色発光ダイオード(LED)は、照明や携帯電話用バックライト、大型ディスプレイなど幅広く実用化されている。