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安倍首相の「ポチ」榊原経団連会長、経済界から露骨な批判噴出…企業と就活生に甚大な被害

文=編集部
安倍首相の「ポチ」榊原経団連会長、経済界から露骨な批判噴出…企業と就活生に甚大な被害の画像1経団連会館(撮影=編集部)

 日本経済団体連合会(経団連)は7月21、22日の両日、長野県軽井沢町のホテルで「夏季フォーラム2016」を開催した。榊原定征会長、岩沙弘道審議員会議長をはじめ副会長、審議員会副議長ら39人が参加した。

 自民党は消費税増税の再延期を決め、7月10日に行われた参議院議員選挙で大勝した。その結果を受けての夏季フォーラム開催だったが、そこで異変が起きた。「国内外の経済が不透明感を増すなか、政権に物申す姿勢の強化が必要だ」との批判が出たのである。

消費増税延期をめぐり、経済3団体に亀裂

 消費税増税をめぐって経済3団体は当初、「予定通りの引き上げを求める」との方針で足並みを揃えていた。しかし、安倍晋三首相が6月、景気の腰折れを防ぐため、2017年4月に予定していた消費税増税時期を19年10月へ再延期すると表明すると、受け止め方にズレが生じた。

 榊原氏は「世界経済は下振れリスクに直面しており、首相の重い決断を尊重する」と理解を示した。

 一方、日本商工会議所の三村明夫会頭は「消費税率引き上げは、社会保障の持続的維持のためにも必要。増税延期は残念。2年半先に消費税を上げられないようなら日本はおそらく財政的に破綻する」と危機感を口にした。

 経済同友会の小林喜光代表幹事も「子や孫の世代に借金のツケを回していいか冷静に考察する必要がある。(再延期するのなら)財政収支黒字化のため財源の手当てについて説明責任を果たす必要がある」と批判した。

 榊原氏は16年4月25日の記者会見で、17年4月の消費税率10%への引き上げについて、「予定通り行うべきだ。(熊本)地震の後でも考えに変わりはない」と述べていた。舌の根が、まだ乾かない2カ月後の6月、安倍首相が消費税率引き上げの先送りを決めると、すぐさま同調した。

 榊原氏の豹変に周囲は呆れた。経団連会員企業からは「従来の主張との整合性が取れない。経団連は信頼を失う」と、榊原氏の発言に一貫性がないことを危惧する声が出た。

 消費税増税再延期の問題だけではない。日本銀行のマイナス金利政策導入の影響で、収益の減少が確実な銀行業界からは「アベノミクスは修正が必要。榊原会長は安倍政権に対して、おかしいとはっきり言うべきだ」(メガバンク幹部)と、批判が噴き出していた。

夏季フォーラムでも批判が噴出

 安倍政権の方針に従順な榊原氏に経済界の不満が鬱積しているなかで、経団連の夏季フォーラムが開かれ、そこで参加企業から批判が相次いだ。7月23日付毎日新聞記事では、経営者の発言をピックアップしている。

「夏季フォーラムに参加した経営者からも『19年10月には消費増税が必ずできるように経団連として経済環境を整え、(会長が参加する)経済財政諮問会議などを通じて財政再建の必要性を政権に強く訴えるべきだ』(飯島彰己・三井物産会長)との指摘や、『安定政権だからこそ歳出削減など国民に痛みを伴う政策を実行できる。経団連として財政再建など、国民にとって不人気だが必要な政策の重要性を訴えていくべきだ』(鵜浦博夫・NTT社長)などの苦言が出された」(毎日新聞記事より)

 さらに、時の政権を批判し、堂々と議論すべきとの発言もあった。経団連副会長の一人がこのように発言している。

「アベノミクスが曲がり角に来ている中で、時には、経済政策について耳障りなことを言う姿勢が必要。政権と経団連は強固な関係を築いており、政治も聞く耳を持つはずだ」(同)

 安倍首相が耳を傾けるかは不明だが、こういう発言が飛び出すほど榊原氏に対するフラストレーションがたまっていたということになる。

 当の榊原氏は会員企業の懸念などどこ吹く風といった具合に、「日本はデフレ脱却、経済再生に向けてまさに正念場。政治が安定している今こそ、思い切った施策を打つべきだ」と安倍政権との連携をさらに強調した。夏季フォーラム終了後の懇親会には、自民党の政調会長だった稲田朋美氏(現防衛相)が出席。榊原氏との2ショットに収まった。

安倍政権との距離を鮮明にした経済同友会

 一方、経済同友会の夏季セミナーは7月14、15日の両日、長野県軽井沢町のホテルで開かれ、60名が参加した。報道によると、政府が検討している経済対策などに対して批判が続出した。

 セミナーでは、消費税増税再延期について「残念だ」という意見や、人口構成がもっとも多い団塊の世代が75歳以上になる25年以降、医療費負担に耐えられなくなるなど、日本の財政に対する強い危機感が示された。また、政府が検討している大規模な経済対策や日本銀行のマイナス金利対策にも懐疑的な声が相次いだという。

「代表幹事の小林喜光氏(三菱ケミカルホールディングス会長)は、『経済の最大のリスクは(内外の)政治』と指摘。夏季セミナーや会見で『政治と経済は車の両輪ではない。立場が違う中で重なるところを一緒にやるのが(両者のあるべき)進め方だ』と言い切っている」(8月30日付東京新聞記事より)

「政治と経済は車の両輪」と一体感を強調する経団連の榊原氏と、「両輪ではない」と一定の距離を保つ小林氏。安倍政権との距離感の違いが鮮明になった。

安倍首相の鶴の一声で決まった就職活動解禁の時期

 安倍政権にベッタリの榊原氏率いる経団連は、新卒学生の就職活動の解禁でも迷走を続けている。

 経団連は9月12日、新卒学生の就職活動の日程を、来年(18年卒)も今年(17年卒)と同じ「3月に説明会解禁、6月に採用面接などの選考解禁」とする方針を正式に決めた。この日程には会員企業の異論が多く、再来年(19年卒)の日程は再検討する。裏を返せば榊原氏が会長に就いている期間は現状維持ということである。

 就活のスケジュールは、長年「12月に説明会解禁、4月に選考解禁」だった。安倍政権が13年、経団連に「学生は学業に専念させるべきだ」と要請。安倍首相の鶴の一声で、榊原経団連は、16年卒の日程を「3月に説明会解禁、8月に選考解禁」に後ろ倒しした。

 だが、就活期間の長期化で学生や大学から不満の声が出たため、今年は選考開始を2カ月前倒ししたが、これにも異論が多く、再来年に変更する。いずれ、「12月に説明会解禁、4月に選考解禁」に戻るとの見方が強い。

 多くの財界人は、アベノミクスの失敗で安倍政権は長くないと見ており、官邸と距離を置き始めた。「首相の忠実な部下」(経団連の元幹部)である榊原氏だけが前のめりなのだ。

 経団連会長は財界総理と呼ばれてきた。首相に対して、言うべき時には物申す存在だったが、榊原氏にそうした役割は期待できなさそうだ。
(文=編集部)

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