楽天の三木谷浩史会長兼社長が、試練の時を迎えている。中核事業であるインターネットショッピングモール楽天市場が、アマゾンジャパンやヤフーなどの攻勢にさらされ足踏み状態なのだ。
力を入れてきた海外事業でも撤退が相次いでいる。このままでは、EC(電子商取引)事業でひとり、負け組になりかねない。
その危機感から三木谷氏は楽天市場のトップの首をすげ替えた。同市場の指揮を執る常務執行役員を7月に交代させた。事実上の更迭とみられている。
2011年から執ってきた高橋理人氏の後任には河野奈保氏を起用した。河野氏はSBI証券出身の39歳で、13年5月に女性で最年少の執行役員に抜擢された。16年4月から楽天市場事業メディアプランニング統括の上級執行役員を務めている。
三木谷氏自身、河野氏が率いる楽天市場を統括する部門のトップに就任。東京・二子玉川の新本社で河野氏に連日、指示を出しているという。
楽天市場の販促費がかさみ営業減益
楽天の16年1~6月期の連結決算(国際会計基準)は、売上高に当たる売上収益が前年同期比11%増の3689億円。ECサービス部門のほか、クレジットカードなどネット金融サービスも堅調で増収につながった。
しかし、本業の儲けを示す営業利益は12%減の487億円(前年同期は540億円)、純利益も4%減の265億円(同277億円)と減益に転じた。主力の楽天市場や楽天トラベルなど国内のネット通販事業で、顧客獲得のための販売促進費がかさんだ。証券サービス部門の低迷も響いた。
三木谷氏はEC事業で年4割の成長を言明していたが、足踏みが続いているとみられる。もっとも、昨年11月から楽天市場単体の業績開示を中止しているので実態はつまびらかではない。
国内流通総額に突如、楽天トラベルを加算する奇策
楽天市場の窮状が鮮明になったのは、15年度第3四半期(7~9月期)決算だった。IRサイトに投資家向けの決算説明会資料が開示されたが、楽天市場の実態を示す流通総額に関するデータが見えなくなっていたから、証券関係者は驚いた。
14年12月期までは、楽天市場をはじめとするECサービスは「国内EC流通総額」として表示してきた。
それが15年第3四半期(7~9月期)から楽天市場と楽天トラベルの数字を合算して公表するようになった。それまでは国内ECに楽天トラベルは入っていなかった。楽天トラベルを入れたのは、国内のECの総額が伸びているように見せるための目くらまし策と受け止められた。