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年収数千万の「優秀すぎる」営業員が売りのソニー生命、「質低下」の危険な兆候…過去に失敗の策再び

文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト
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 ソニーの「優等生」のビジネスモデルも限界がきたのかもしれない。近年、ソニーの事業部門で最も利益に寄与してきたソニー生命保険が、かつて撤退を余儀なくされた海外市場に再進出する可能性が高まっている。生保レディーと一線を画し、幅広い金融知識を持つ「ライフプランナー」と呼ばれる営業担当者を武器に、成熟市場の国内でシェアを拡大してきたものの、顧客も一巡し、先細りが現実のものになりつつあるからだ。

豪生保企業との提携で海外へ再進出?

「ソニーモデルも限界か」と競合他社幹部が漏らしたのは、10月25日のことだ。この日、ソニー生命は豪生命保険会社クリアビュー・ウェルス・リミテッドの発行済み株式14.9%を取得すると発表した。取得額は1億4500万豪ドル(約115億円)。現時点では少数出資での提携にとどまるが、将来的な進出も視野に入れる。

 ソニー生命は1998年にフィリピンに進出して2012年に撤退した過去があるが、今回とは進出までの経緯が異なる。

「当時の岩城賢社長は、ソニー本体の副社長を務め次期社長も射程に入れていたが、大賀典雄元社長に切られた。見返してやろうと身の丈以上に拡大路線を採った」(ソニー元社員)

 実際、岩城氏の退任後は、原点回帰して国内営業で確実に契約数を伸ばしていった。それだけに今回の海外企業への出資は既存のモデルの行き詰まりとの見方が支配的だ。

ソニー生保は一攫千金の転職企業だった?

 ソニーのライフプランナーといえば、一般の会社員が一攫千金を狙える転職先として知られてきた。実力主義の世界とはいえ、数千万円の報酬を手にしているプランナーも少なくない。

 当然、求められる能力も「生保レディー」と呼ばれる他社の営業担当者とは別物だ。生命保険はもちろん、自動車保険、住宅ローン、外貨などの資産運用といった“お金の悩み”に臨機応変に対応できる知識と柔軟さが求められる。そのため、採用もかつては社会人経験があり、中長期の活躍が見込める30代半ばから40代前半の男性に絞っていた。

 属人性の高いビジネスモデルだけに、早晩、規模の拡大に限界が訪れると指摘されていた。ライフプランナーの弱体化が現実的にささやかれ始めたのは、数年前からだ。

「優秀な人材が採れなくなり、20代や50代の採用に積極的になった。これまで男性に絞っていたのに女性にも門戸を開いた」(別の生保社員)

 優秀なライフプランナーとはいえ、ひとり当たりの契約数には限界がある。契約数を増やすために、人を増やそうと採用条件を緩和すれば、自ずと質のバラツキは多くなる。事実、岩城氏の社長時代に、採用人数を増やしたことでライフプランナーの質が低下した過去がある。

2017年度末までにライフプランナー300人増を目指す

 一部報道では14年に4300人程度だったライフプランナーは、17年度までに4600人超に増加させる方針だという。女性の数も現状の数十人から20年に100人まで増やす。14年時点で年100人増のペースを今後、年150~200人増くらいまでに上げるという。早期にライフプランナーを6000人態勢とする方針で、拠点がまだない県にも支社を置く。沈みゆく国内保険市場に人海戦術で対抗するわけだが、容易ではない。

ソニー生命の主力は死亡保障の高額商品。必要とする顧客は限られている。契約が一巡した今、グループの損保や銀行、介護などの他事業の販路として戦略的に活用していくのが現実的な戦略だろう」(競合他社幹部)

 マイナス金利や利回り低下による打撃も加わり、ソニー生命を中核とするソニーフィナンシャルの株価は、1年前に比べて3割近く下落したままだ。かつて痛い目に合った、ライフプランナーの増員と海外展開の成否は不透明だが、屋台骨のソニー生命がつまずけば、回復途上にあるソニーの業績も揺さぶられることになる。
(文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト)

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