NEW

米トランプ当選とTPP崩壊で、中国の覇権強まる兆候…アジアで一大経済圏形成

【この記事のキーワード】

, ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
「Thinkstock」より

 11月21日、米国のトランプ次期大統領は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)からの離脱を明言した。これは、世界経済の安定と成長を支えてきた自由貿易に逆行する動きだ。TPPは、米国や環太平洋の多くの国が経済的な側面から、対中包囲網を形成して中国の身勝手な行動を食い止めようとした仕組みである。今回、トランプ次期大統領はそれを明確に否定したことになる。

 一方、中国は東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を重視してきた。それに加え、中国から欧州までを陸路と海路でつなぐ「シルクロード経済圏構想」を提唱し、中国を中心に経済成長を享受しようと世界に呼びかけてきた。これは、米中の覇権争いを象徴する動きと言える。

 トランプ氏が離脱を明言した以上、TPPの実現は風前の灯だ。トランプ氏は“アンチ・グローバリゼーション”を主張し、グローバル化が進むなかで競争力を失った鉄鋼など重厚長大産業の復活を訴えて、大統領の座に就こうとしている。同氏の主張を額面通り受け止めると、米国は自国の利益を第一に考え、保護主義色の強い通商政策を目指すだろう。

 それは米国を軸とした国際連携を弱め、世界経済を多極化に向かわせる。自国のことだけを考える国が増えると、通貨安競争や貿易摩擦が進み、世界経済全体の不安定感が増すはずだ。そうなると、資源や食糧を輸入に頼る日本は厳しい状況に直面する。日本は、中長期的な観点で自国経済と東アジア情勢の安定を念頭に置き、主体的に多国間の経済連携交渉を進めることを考えるべきだ。米国に頼ってばかりはいられない。 

TPPの重要性と戦略的な意味

 
 TPPは、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム、米国の12カ国が参加する多国間の経済連携協定だ。2015年10月のアトランタ閣僚会合にて、各国はTPPの大筋に合意し、各国での承認と早期発効が目指されてきた。

 TPPの意義は、参加国間で貿易、投資、競争環境、知的財産などにかかわる幅広い分野での包括的な自由化を実現することだ。それは、参加国間での経済や貿易などの“ルールの統一化”だ。そうすることで先進国はアジア新興国の需要の取り込みが可能になり、新興国も先進国市場への輸入拡大などを期待できる。TPPは世界経済のGDPの40%程度、貿易の30%程度を占める経済圏の誕生につながる。そのため、インドネシアや韓国、台湾、タイなど、参加への関心を示す国も増えてきた。