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米トランプ当選とTPP崩壊で、中国の覇権強まる兆候…アジアで一大経済圏形成

文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授
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 自らを軸とする世界秩序を目指す中国にとって、保護主義の考えを持つトランプ氏が次期米大統領に就任することは、RCEPを基盤に覇権強化を進める絶好のチャンスだ。11月19日、習近平国家主席はRCEPの「早期妥結を図る」と表明し、中国を軸にアジア地域の経済連携交渉を主導する考えを示した。

 中国の経済連携交渉は身勝手かつ強引だ。中国はアジア各国に海洋資源の共同開発などを呼びかけてきた。色よい返事がないと、中国は他国の領域に海洋進出を進め、歴史的な領有権があることを一方的に主張してきた。これがフィリピンやベトナムとの領海問題につながっている。トランプ氏がTPP離脱を明言しただけに、中国はTPP参加国などへの切り崩しを加速させるはずだ。すでにフィリピンのドゥテルテ大統領は米国との決別を示している。そのなかで中国が攻勢を仕掛けると、アジアの政治・経済情勢の不安定感は高まるだろう。

今後の世界的通商関係の行方を占う

 トランプ氏は、多国間の経済連携協定ではなく、二国間での通商交渉を通して鉄鋼や機械など、伝統的な米国産業の復活に資する条件を引き出そうとしている。それが多くの有権者の支持を集めただけに、今後、TPP交渉の再開を見込むことは現実的ではない。

 アジアを中心とする一大市場の創出と、対中包囲網の整備を目指すTPPから米国が離脱することが決定的となった以上、世界経済の安定と成長を支えてきた経済連携は進みづらくなる。トランプ氏のもと、米国は自国のことを第一に考え、輸入品への関税率引き上げなどを通して保護主義色の強い通商政策を進める可能性がある。そうなると、各国間の通商協定にも亀裂が生じやすくなる。南シナ海などを中心に中国は自国の覇権強化のために、さらなる進出と需要の囲い込みを行うはずだ。それは、国際社会の多極化と保護主義の台頭につながる。

 そこで日本は、米国とのFTA交渉を進めるとともに、米国抜きでの多国間の経済連携交渉を同時に進めるべきだ。日本は、鉱山・エネルギー資源、食糧の多くを輸入に頼っている。そして、国内では少子化と高齢化によって経済のパイは徐々に縮小していく。経済を安定させるためには、海外の需要取り込んでいくことが欠かせない。そのためには、できるだけ多くの国と経済連携協定を結び、日本の理解者=シンパを獲得する努力を重ねるしかないだろう。

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