第三セクターの経営が相変わらず芳しくない。総務省の調査によると、2015年における第三セクター数は6663法人と、前年度より約100法人減少している。経営状況を見ると、赤字の法人が4割を占め、深刻な状況といえる。
そもそも第三セクターとは、地方公共団体が出資を行っている社団法人・財団法人・特例民法法人および株式会社・合名会社・合資会社・合同会社・特例有限会社とされる。一般には、官と民の共同出資により設立された事業体と捉えられている。
官と民の協力と聞くと、「鬼に金棒」というイメージでさまざまなことが有利に運ぶように思えるが、実際は上記に述べた通り、厳しい状況が目立っている。第三セクターの設立や運営における重要なポイントはどのような点にあるのか。
そこで、岐阜県郡上市に所在する第三セクター、明宝特産物加工(明宝ハム)の事例を基に検討していく。情報収集のため、明宝特産物加工専務取締役、名畑和永氏の協力を得ている。
明宝特産物加工とは?
市が10%の株を持つ第三セクターである明宝特産物加工は、岐阜県山間部の郡上市に所在する食品メーカーである。1988年設立以降、現在まで概ね右肩上がりの成長を遂げてきている。資本金は3000万円、従業員数は77名となっている。主力商品である「明宝ハム」の年間出荷量は120万本、ソーセージは40万本となっており、15年度の売り上げは約14億円である。
明宝ハムは昔ながらの製法によりつくられている。良質な国産の豚のもも肉だけを原料とし、保存料、着色料、酸化防止剤、増量剤は使用していない。本社および工場は緑豊かな場所に立地している。筆者が訪問した際も、工場では生産に携わるスタッフ60名が丁寧に作っていた。たとえば、もっとも手間がかかる工程である肉の解体作業では、細かい筋を1本1本まで取り除いていた。こうしたスタッフはすべて地元出身者であり、さらには結婚のため転居した1名を除き、全員が市内から通っている。こうした強い地元志向により、スタッフの間に家庭のような一体感が生まれ、真摯な姿勢でのモノづくりを実現している。
価格は、自社のインターネットショップでは税込1134円(360g)となっており、大手メーカーの量産ハムと比較すると高価格となっている。しかし、先に述べた通り、国産豚肉を原料とし、手作業の工程が多いことを考慮すると、低価格での販売は極めて難しい状況である。もちろん、大企業と比較し、規模の経済に劣る中小企業が低価格を志向しても難しい場合が多いであろう。