トヨタ自動車は2016年11月14日、19年に稼働するメキシコ新工場の建設予定地で起工式を行った。メキシコ新工場の総投資額は10億ドル(約1080億円)。現地で2000人を雇用し年間20万台のカローラを生産する予定だ。
現地からの報道によると、式典にはトヨタの内山田竹志会長やメキシコのグアハルド経済相が出席。あいさつしたグアハルド経済相は、ドナルド・トランプ次期米大統領が廃止か見直しを主張している北米自由貿易協定(NAFTA)に関して「(米国、カナダ、メキシコの)北米の競争力を生み出している源泉だ」と重要性を強調した。
トランプ氏が目の敵にしているNAFTA問題の最中に、トヨタは新工場の建設に着手したのである。
製造業のメキシコへの工場移転計画を阻止
「雇用拡大」を公約に掲げて当選したトランプ氏は、国内製造業者へ圧力を強めている。隣国メキシコで生産を検討しているメーカーに、ツイッターで国内生産を維持するよう“口撃”した。
世界有数の空調機器メーカーで、東芝と合弁会社を持つキヤリア社は16年2月、19年をめどにインディアナ州の工場を閉鎖し、生産をメキシコに移すと発表した。1400人が解雇される予定だった。
トランプ氏は選挙戦中に「大統領になれば計画を100%撤回させる」と主張し、労働者の不満の象徴としてキヤリア社の名前を使い続けた。
当選したトランプ氏は、いちはやくキヤリア社に乗り込み、1000人の雇用の維持を押し通した。キヤリア社のメキシコ移転の翻意を勝ち取ったトランプ氏が、凱旋将軍さながらに労働者に迎えられるシーンが日本のテレビ番組でも大きく報じられた。
キヤリア社の工場移転中止に関し、アーネスト大統領報道官は12月1日の記者会見で「次期大統領が、あと804回(移転中止に)成功すれば、オバマ政権下での製造業の雇用創出規模に届く」と述べ、こうした手法による雇用維持策は非効率だとの認識を示した。
NAFTAの撤廃か見直しを主張
トランプ氏が選挙前に掲げた政策は、日本企業のビジネスにも影響を与えることになる。メキシコはNAFTA経済圏であり、NAFTAを前提に日系企業は生産拠点を整備してきたからだ。