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未曽有の世界経済危機の兆候…中国は資金流出、EU各国は排他主義で分裂、米国急失速

文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授
未曽有の世界経済危機の兆候…中国は資金流出、EU各国は排他主義で分裂、米国急失速の画像1「Thinkstock」より

 2016年11月8日に米国の大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ氏が当選して以降、金融市場では米国経済への強気な見方が増えてきた。それは、トランプ氏が財政出動、減税、規制緩和を進め、米国経済の成長率を2~4%程度に押し上げると主張してきたことに影響されている。リーマンショック後の世界経済では、各国が金融政策を駆使して低金利環境を整備し、投資や消費を促そうとしてきた。エコノミストらの間でもこうした政策の効果にはさまざまな見方がある。そのなかでも世界的に需要は盛り上がりに欠け、需給ギャップが拡大基調にあるというのは多くの専門家が認識しているポイントだろう。

 その状況下、トランプ氏が主張する5000億ドルとも1兆ドル(59兆~117兆円程度)ともいわれる大規模なインフラ投資が本当に進むと、世界的に需要は回復し物価も上昇しやすくなる。それが大統領選挙以降の米国株式、ドルの上昇につながった。すでに米連邦準備理事会(FRB)関係者が2017年に3回の利上げを予想していることを踏まえても、トランプ氏の経済政策(トランプノミクス)の潜在的な影響は無視できない。

 こうした期待がどうなるかは、今後の政治次第だ。17年、米国だけでなく欧州でも独仏蘭で総選挙などの重要な政治イベントが控える。各国の政治動向次第で世界経済に無視できない影響が及びやすいことは冷静に考えるべきだ。

17年はまさしく政治の年

 
 17年の世界経済の展開を論じる際、無視できないのが主要国の政治動向だ。まず注目されるのは大統領選挙後、急速に先行きの期待が高まってきた米国の動向だろう。1月20日、トランプ氏は正式に大統領に就任する。その後、予算編成や債務上限の引き上げなど、議会との交渉などを通して政治的に解決されなければならない案件は多い。

 財政出動を主張しているように、トランプ氏は“大きな政府”を志向している。一方で、伝統的に共和党は“小さな政府”を重視し、経済の営みは市場に任せるべきだとの考えを持っている。選挙戦のなかでトランプ氏と共和党指導部の関係が悪化したことを踏まえると、同氏が共和党や議会との利害調整を円滑に進め、有権者から一定の支持を維持していくことができるかは不透明だ。政治経験の乏しい同氏にとって、それは簡単なことではない。すでに財政出動観測から金利は上昇し、住宅投資や耐久財の消費動向は不透明だ。ドル高が輸出や企業業績に与える影響も無視できない。今後の米国経済はトランプ氏の政治手腕次第だろう。

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